絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第五話】: 二面の顔と、女の性 1
時計の針が午前0時をさす。
理央が寝静まった深夜、リビングの空気は沈黙に包まれ、崖から崩れ落ちた岩ように重く冷え切っていた。
誠司の吐き出す溜め息が、リビングの空気を裂き、不吉な波動を漂わせる。
ダイニングテーブルの椅子がズレ『ギギ』という音が、沈黙を切り裂く唯一の鼓動だった。
ひとみが静かに、テーブルに着く。
向かい合わせに座り、腕を組んだ誠司が、獲物を狙う獣のような目で彼女を睨めつけた。
最初に切り出したのは、ひとみだった。
「……私たち、もう、終わりにしない。誠司(あなた)に、これ以上ついて行く自信が無いの」
その言葉を聞いた瞬間、誠司の貧乏ゆすりが激しくなり、苛立ちが、小刻みな振動となって床に伝わる。
「離婚? ……笑わせるな。お前が勝手に壊したんだろ。近頃のお前が、俺に対する態度はなんだ。よそよそしく、まるで他人じゃないか。えっ!」
誠司の吐き捨てるような言葉が、冷たく鼓膜を叩く。
「誠司(あなた)だっていつも私を避けて、一人で携帯やTVばかり見てるじゃない」
ひとみはテーブルに肘をつき、両手を堅く握って、俯いている。
「……最近は帰りも遅いし、酒の匂いもするし。
理央が寝静まった深夜、リビングの空気は沈黙に包まれ、崖から崩れ落ちた岩ように重く冷え切っていた。
誠司の吐き出す溜め息が、リビングの空気を裂き、不吉な波動を漂わせる。
ダイニングテーブルの椅子がズレ『ギギ』という音が、沈黙を切り裂く唯一の鼓動だった。
ひとみが静かに、テーブルに着く。
向かい合わせに座り、腕を組んだ誠司が、獲物を狙う獣のような目で彼女を睨めつけた。
最初に切り出したのは、ひとみだった。
「……私たち、もう、終わりにしない。誠司(あなた)に、これ以上ついて行く自信が無いの」
その言葉を聞いた瞬間、誠司の貧乏ゆすりが激しくなり、苛立ちが、小刻みな振動となって床に伝わる。
「離婚? ……笑わせるな。お前が勝手に壊したんだろ。近頃のお前が、俺に対する態度はなんだ。よそよそしく、まるで他人じゃないか。えっ!」
誠司の吐き捨てるような言葉が、冷たく鼓膜を叩く。
「誠司(あなた)だっていつも私を避けて、一人で携帯やTVばかり見てるじゃない」
ひとみはテーブルに肘をつき、両手を堅く握って、俯いている。
「……最近は帰りも遅いし、酒の匂いもするし。