絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第五話】: 二面の顔と、女の性 3

その内容には、老人(おとこ)のひとみに対するエゴの塊が垣間見え、欲望への執念が感じられた。

その中には、理央の親権問題もお金で解決出来ると、添えてもある。

(やっぱり……お金。お金、お金……付き合い始めた頃から、お金に煩かったわね)

結婚前からの誠司に対して、唯一、毛嫌いした事は、金銭面での細かさだった。

「……そうよね。私が悪いんだわ……忙しく、家の事をやっても、労いのひとつも……誠司(あなた)は、無かったのよね。息抜きに行き、帰りが遅くなれば、……だらしないと、烙印を押される。……もう、うんざり」

匙を投げたかのように鼻で笑い、誠司は立ち上がり、無言で寝室に向かう。

ひとみは無言で彼の背中を、感情の消えた瞳で見つめていた。

窓の外で風に揺れる街路樹のザワザワという騒めきが、ひとみの孤独を嘲笑っている。

翌日の午後。

ひとみは理央とリビングにいた。

京都の旅行ガイドブックを広げ、ページを捲りながら話しが尽きない。

「ママ、『麺屋古都』って知ってる?……凄く、美味しいんだって。私、絶対に食べたい」

理央は身を乗り出して夢中で話す。

理央の目的のひとつを聞き、ひとみは頷きながら微笑み、娘の顔を見ている。
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