絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第六話】:背徳の褥(しとね)3

手を差し込んだ胸元のボタンが外れていた事に、
老人は喜び、ひとみの項に湿った熱い息を吹きかけた。

「フゥーッ」という音と共に、熱い飛沫が項にこびりつき、ひとみの背筋を「ゾクッ」と震わせる。

老人は半身で下になった腕を、ひとみの首筋を巻き込み、指で唇をなぞって弄び、もう片方は乳首熟した果実を潰すような力で摘み、『コリコリ』と指先で抓る。

その硬い爪が皮膚に食い込むたび、ひとみの奥底から、鋭い快楽が火花のように弾けた。

下腹部が「ドクン」と脈打ち、シーツを掴む手のひらが、自身の脂汗で「ジトリ」と滑る。

(忘れられない……この指の感触。伊豆での事を思い出すわ)

脳裏を駆け巡る凌辱の情景に自分が写り、老人に抱かれ身悶える姿が。

カサついた指先が唇を「ヌチャッ」となぞり、歯茎の裏側まで、脂ぎった男の味を侵入させる。

二本の指先で唇を開かせ、ひとみの口内に指を入れ、舌先を摘む。

ひとみの鼻腔には、今や老人の体臭と、自身の肌から立ち上る、甘く饐えた匂いが充満していた。

老人の指を「雄」に見立て、ひとみは口を窄め、舌先を絡め吸う。

娘の寝息を耳の端で捉えながら、ひとみは喉を鳴らし、溢れ出た唾液を「ゴクリ」と飲み込んだ。

「どうだ……娘のすぐ横で、抱かれる気分は。お前も興奮するだろ……」

老人は意地悪そうに、ひとみに囁く。

(……娘の事は言わないで。今は……一人の女として、老人(あなた)を受け入れたいの)

その言葉に含まれた悪意ある熱気が、彼女の鼓膜を震わせ、脊髄を「ゾクッ」と駆け上がった。

囁きながら、ひとみの寝間着のズボンとショーツを膝下、足首まで徐々にズリ下げ、足を持って脱がす。

(理央(このこ)に、こんな姿見られたくない。母親のこんな、淫らな姿……)

ひとみは答えない。

いや、声を出せば理央が目覚めてしまう。

屈辱、背徳、そして――抗い難い悦楽。
< 154 / 160 >

この作品をシェア

pagetop