絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第一話】: 侵食される日常 4

​病院では佐藤の歪んだ指に蹂躙され、家へ帰れば誠司の無機質な「愛」に胃を焼かれる。

ひとみの心は、もう限界だった。どこへ行っても、誰といても、自分がバラバラに砕けていくような感覚。

​(……助けて。もう、壊して……)

​翌朝。

総武線、いつもの快速電車。

いつものように背後に密着した「あの男」の体温を感じた瞬間、ひとみの中で何かがプツリと切れた。

嫌悪していたはずの、あの粗暴な男の存在だけが、今のひとみにとって唯一「自分が女であること」を証明する拠り所になっていた。

​ひとみは、震える声で男の耳元に唇を寄せた。

​「……抱いて。今夜、どこでもいいから……」

訳ありな、縋るような囁き。

一瞬、男の動きが止まった。

だが、次の瞬間、男は低く濁った笑い声を漏らした。

​「……いいぜ。なら、今夜面白い所へ連れてってやるよ」

意味ありげに、ニヤッと眼が笑った。
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