絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第一話】: 侵食される日常 5
夜、上野。
猥雑なネオンがひしめく雑居ビルの一角。
男に連れられてやってきたのは、看板もない重厚な扉の前だった。
「……ここ、は?」
「ハプニングバーだよ。お前、壊してほしいんだろ?」
足を踏み入れた瞬間、ひとみの鼻腔を突いたのは、濃厚な香水の匂いと、大勢の男女が放つ剥き出しの情欲の臭気だった。
薄暗いフロアのあちこちで、人目を憚らず絡み合う肉体。
佐藤に見られたら終わり。誠司に知られたら、すべてが消える。
だが、その圧倒的な「非日常」に、ひとみの身体は皮肉にも疼きを止めることができなかった。
「ほら、行ってこいよ。お前が望んだことだろ」
男の大きな掌が、ひとみの背中を強引に突き出した。
衆人環視の中で晒される、事務職らしい端正なひとみの姿。
飢えた男たちの視線が、獲物を見つけた猛獣のように彼女に突き刺さる。
猥雑なネオンがひしめく雑居ビルの一角。
男に連れられてやってきたのは、看板もない重厚な扉の前だった。
「……ここ、は?」
「ハプニングバーだよ。お前、壊してほしいんだろ?」
足を踏み入れた瞬間、ひとみの鼻腔を突いたのは、濃厚な香水の匂いと、大勢の男女が放つ剥き出しの情欲の臭気だった。
薄暗いフロアのあちこちで、人目を憚らず絡み合う肉体。
佐藤に見られたら終わり。誠司に知られたら、すべてが消える。
だが、その圧倒的な「非日常」に、ひとみの身体は皮肉にも疼きを止めることができなかった。
「ほら、行ってこいよ。お前が望んだことだろ」
男の大きな掌が、ひとみの背中を強引に突き出した。
衆人環視の中で晒される、事務職らしい端正なひとみの姿。
飢えた男たちの視線が、獲物を見つけた猛獣のように彼女に突き刺さる。