絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第一話】: 侵食される日常 6

​受付を済ませ、重厚な扉の先。

男に促され、ひとみは女子更衣室でレディーススーツを脱ぎ捨てた。

クリーニングの効いたシャツ、カッチリとしたタイトスカート。

それらをロッカーに閉じ込め、肌の上に直接、薄手のガウンを羽織る。

​「……こんな格好で、外に出るの?」

​「いいから来いよ。お前が望んだことだろ」

​男に導かれフロアに出ると、そこには甘い酒の匂いと、退廃的な音楽が満ちていた。

カウンターに座らされ、男から差し出された強い酒を煽る。

病院での佐藤の執着、自宅での誠司の空虚な愛……それらを忘れるように、ひとみは何度もグラスを重ねた。

​頬が火照り、視界がとろりと溶け始めた頃。

男がひとみの腰を抱き、フロアの奥にある**「大部屋」**へと連れて行く。

カーテンを抜けた先、薄暗い空間にいくつものマットが敷き詰められ、そこかしこで絡み合う肉体の影が見えた。

​「……あ、……っ」

​恐怖よりも先に、酒の力で麻痺した脳が、異様な昂ぶりを覚える。

(……すっ、ごぉい……っ)

マットに押し倒され、ガウンの帯を解かれると、ひとみの端正な肢体が無防備に晒された。

​「おい、いい獲物が来たぞ」

​「あの男」の声に、周囲にいた常連の男たちが、獲物を囲む獣のように集まってくる。

一人がひとみの口を塞ぎ、一人が胸を弄り、そして「あの男」がひとみの奥を強引に貫いた。

​「ん、んん……っ! ああぁ……っ!」

​酒で火照った身体に、男たちの冷たい手や熱い欲望が、次々と押し寄せ、蹂躙していく。

男たちが果てるたびに、ひとみの胎内は誰のものかも分からない「種」で重く、熱く満たされていく。

​輪の外では、常連の女たちがその様子を眺め、冷笑を浮かべていた。

レディーススーツを着ていた「病院の受付嬢」としての誇りは、この薄暗い大部屋のマットの上で、大量の精液と共に塗り潰されていった。
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