絡まる残り香―滴る甘い蜜―

白衣の陥穽 【第二話】2

加納の腰の動きが、一段と激しさを増し、肉を叩く。

結合部から飛散する愛液が、シーツに染みを作る。

湿った革靴の擦れる音と、重い衣擦れが部屋に満ちた。

​「……あ、……そこ、……ああっ!」

ひとみの喉が、自分でも驚くほど淫らに震える。

鼻腔を突くのは、精悍な男の脂と、安っぽい芳香剤の匂い。

自慢の脚の指先が、空を掴むように激しく屈曲した。

​加納の大きな手が、ひとみの顎を強引に上向かせる。

視界に飛び込むのは、欲望に歪んだ外科医の双眸。

彼の口腔から漏れる、熱く湿った二酸化炭素の塊。

​「若林さん……旦那の顔、思い出せますか?」

耳朶を噛み切らんばかりの勢いで、卑猥な言葉が注がれる。

その言葉の棘が、ひとみの背徳感を極限まで肥大させた。

内壁を抉る、硬質で容赦のない質量の反復運動。

​ひとみは彼の背中に爪を立て、皮膚の弾力を確かめる。

爪の間に残る、彼の皮膚の微かな感触と、獣の匂い。

幕張の清潔な寝室では決して得られない、泥濘の快楽。

​加納の腰の突き上げが、一際深く、鋭く内壁を抉る。

結合部から溢れる蜜が、太腿を伝ってシーツを汚す。

部屋に響くのは、粘りつくような肉の衝突音だけ。

​「……あ、……もう、……っ!」

ひとみは白目を剥き、自慢の脚を彼の腰に食い込ませた。

ストッキングの繊維が、彼のズボンの生地と激しく擦れる。

鼻腔を支配するのは、雄の精気と、湿った愛欲の匂い。

​加納の身体が大きく震え、ひとみの深奥で爆ぜた。

注ぎ込まれる灼熱の質量が、子宮の入り口を熱く叩く。

「……っ、ふ、あ……」

​彼の重みが、ひとみの形の良い胸を圧迫し、潰す。

耳元で聞こえるのは、加納の荒い、勝利を確信した吐息。

首筋に滴る彼の汗が、冷たい夜気に触れて急速に冷える。

​結合部が離れる瞬間の、グチャリとした、卑猥な音。

ひとみは脱力し、天井のシャンデリアの揺れを見つめた。

御茶ノ水の夜、幕張へ帰るための仮面を、ゆっくりと拾う。
< 4 / 8 >

この作品をシェア

pagetop