絡まる残り香―滴る甘い蜜―
第六章:断罪の朝、あるいは新たな渇望

【第一話】:事後の残響、冷え切った階段 1

重厚な扉が開いた瞬間に流れ込んできた、フロアの物憂げなジャズの旋律。

それは、つい数分前までひとみを支配していた「肉の咆哮」を、残酷なほど場違いな異界の記憶へと押し流していく。

「……っ、ふぅ……」

ひとみは、泥のように重い四肢を震わせながら、紅い絨毯からゆっくりと身を起こした。

(……つ、か、れ、た、……)

引き裂かれた真っ白なガウンの隙間から、男たちに貪り尽くされた肌が、赤紫色の斑点となって無数に浮き上がっている。

太腿の内側を伝い落ちる、温かく、そして不潔な液体の感触。

(……早く、洗いながさなきゃ……)

それは、彼女の聖域であった子宮に、男たちの野卑な「生」が刻み込まれた確かな証拠だった。

隣では、美奈代が力なく横たわったまま、虚ろな瞳で天井を仰いでいる。

彼女の豊かな乳房には、男の指が食い込んだ痕が指形のまま白く残り、そこからじわりと赤みが差してくる。

「……ひとみ、さん……」

美奈代の声は掠れ、湿り気を帯びていた。

(……分かってるわ……美奈代さん)

その呼びかけに、ひとみは言葉を返す代わりに、自身の指先で彼女の汗ばんだ肩にそっと触れる。

二人の間に流れるのは、言葉による共感ではなく、同じ地獄の底を覗き込み、同じ「雄」の質量を受け入れた者だけが共有できる、頽廃的な連帯感だった。
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