絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第一話】:事後の残響、冷え切った階段 2

鼻腔に残る精の匂いと、イランイランの香りが混ざり合った濃厚な芳香が、現実に戻ろうとする脳を、なおも甘美な痺れで引き留めようとする。

「……行きましょうか。このままじゃ、本当に溶けてしまいそう」

美奈代が掠れた声で呟き、もつれる脚を叱咤するように立ち上がった。

ひとみもまた、内腿を伝う異物の不快な熱を、皮肉にも愛おしく感じながら、乱れたガウンの合わせを寄せる。

だが、引き裂かれた白い布地は、もはや彼女の「聖母」としての純潔を隠し通す役目を果たしてはくれなかった。

二人は支え合うようにして、赤い照明が落とされた大部屋を後にした。

廊下に出た瞬間、空調の冷ややかな空気が、汗ばんだ肌を一気に剥き出しにする。

その寒暖差が、かえって体内に残された「男の熱」を鮮明に浮き上がらせた。

更衣室へと続く階段。

一段上るごとに、腹部の奥底で、先程まで自分を蹂躙していた男たちの拍動が蘇る。

「……ん、っ……」

ひとみは思わず、壁に手をついて立ち止まった。

(……あったくっ……苦しかったんだからね)

脳裏をよぎるのは、鼻を摘まれ、呼吸を奪われながら喉を犯された、あの屈辱にまみれた絶頂。

その光景がフラッシュバックするたび、彼女の秘所は、まるで更なる蹂躙を欲するように、トクン、と熱く脈打った。

更衣室の鏡に映し出された自分を見て、ひとみは息を呑む。

(あらっやだ!……こんなとこに……消せるかな―?髪も…ボサボサ……電車乗れるかな……っ)

乱れた髪、充血した瞳、そして鎖骨から胸元にかけて散る、野卑な男たちの「所有印」。
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