絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第三話】:侵食する影、偽りの旅路 2
ただ、隣に座るボスの、肉厚で節くれ立った手がテーブルの上を滑り、自身の指先に微かに触れるたび、全身の毛穴が総毛立つような恐怖と快楽に襲われる。
「実はね、ひとみさん。今週末、特別な『別荘』で秘密のパーティーが開かれるのよ」
メインディッシュの赤ワインソースが、血のように皿に広がる。
美奈代が身を乗り出し、湿った吐息とともに囁いた。
「地下の『大部屋』なんて、ほんの入り口。そこは、選ばれた者だけが、真の家畜として……いえ、真の悦びを知ることができる聖域なの。あなたのその『聖母』の皮を、一枚残らず剥ぎ取ってあげるわ」
その誘いは、ひとみにとっての死刑宣告であり、同時に救済の福音でもあった。
「週末、伊豆へ行ってくるわ。大学時代の友達と、一泊で……」
帰宅したひとみは、夕食の片付けを終えたリビングで、背中を向けたまま夫へ告げた。
洗剤の泡が、指先の震えを隠してくれる。
地下のレストランで、ボスの冷徹な眼差しと美奈代の熱を帯びた勧誘に「はい」と頷いてしまった自分。
その裏切りを、精一杯の欺瞞で塗り潰そうとしていた。
だが、背後で新聞を置く乾いた音が響く。
振り返った夫の顔には、隠しきれない不信の影が、どす黒い染みのように広がっていた。
「……またか。最近、帰りが遅いのもその『友達』のせいか? ひとみ、お前、一体何をしているんだ」
「実はね、ひとみさん。今週末、特別な『別荘』で秘密のパーティーが開かれるのよ」
メインディッシュの赤ワインソースが、血のように皿に広がる。
美奈代が身を乗り出し、湿った吐息とともに囁いた。
「地下の『大部屋』なんて、ほんの入り口。そこは、選ばれた者だけが、真の家畜として……いえ、真の悦びを知ることができる聖域なの。あなたのその『聖母』の皮を、一枚残らず剥ぎ取ってあげるわ」
その誘いは、ひとみにとっての死刑宣告であり、同時に救済の福音でもあった。
「週末、伊豆へ行ってくるわ。大学時代の友達と、一泊で……」
帰宅したひとみは、夕食の片付けを終えたリビングで、背中を向けたまま夫へ告げた。
洗剤の泡が、指先の震えを隠してくれる。
地下のレストランで、ボスの冷徹な眼差しと美奈代の熱を帯びた勧誘に「はい」と頷いてしまった自分。
その裏切りを、精一杯の欺瞞で塗り潰そうとしていた。
だが、背後で新聞を置く乾いた音が響く。
振り返った夫の顔には、隠しきれない不信の影が、どす黒い染みのように広がっていた。
「……またか。最近、帰りが遅いのもその『友達』のせいか? ひとみ、お前、一体何をしているんだ」