絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第一話】: 白衣の陥穽 7
翌朝、御茶ノ水駅の改札を抜けると、排気ガスの煤けた匂いが鼻を突く。
ひとみの自慢の脚は、昨夜の情事の名残で微かに重い。
ストッキングの編み目が肌を噛む感触が、背徳を思い出させた。
ナースステーションの脇を通ると、珈琲の苦い香りが漂う。
白衣の群れの中に、加納の後ろ姿を見つけて心臓が跳ねた。
彼の広い背中から、昨夜の猛々しい獣の匂いを探してしまう。
「若林さん、おはよう。顔色が少し赤いようだが」
不意に声をかけてきたのは、内科医の佐藤だった。
加納とは対照的な、柔軟剤の香りがする温厚そうな男。
だが、その眼鏡の奥の瞳は、ひとみの形の良い胸を卑しく舐めた。
「……少し、のぼせているのかもしれません」
ひとみはわざとらしく、指先で鎖骨のあたりを仰いだ。
佐藤の視線が、開いた襟元から覗く白い肌に吸い寄せられる。
電子カルテのタイピング音が、診察室の静寂を規則正しく刻む。
佐藤の手が、資料を渡すフリをしてひとみの指を掠めた。
加納の冷徹な熱とは違う、湿り気を帯びた粘りつくような体温。
「今度、美味しいワインでも……いや、失礼」
言葉を濁す彼の喉仏が、欲望で大きく上下したのを彼女は見逃さない。
佐藤が去った後、廊下には彼の安物のアフターシェーブローションの匂いが淀んでいた。
ひとみは受付の椅子に深く腰掛け、自慢の脚をゆっくりと組み替える。
タイトスカートの裏地が太腿の熱を吸い、湿った感触を伝えてきた。
「……ふふ、あからさまだわ」
指先で、まだ火照りの残る形の良い胸の輪郭をなぞる。
周囲を歩く研修医たちの靴音と、点滴カートが転がる金属音が混ざり合う。
その無機質な騒音が、ひとみの内側の淫らな渇きをさらに煽った。
午後、資料室の整理をしていると、背後の扉が重く閉まる音がした。
古い紙の埃っぽい匂いと、微かな汗の酸っぱい匂いが立ち込める。
振り返ると、そこには息を乱した佐藤が立っていた。
「若林さん……さっきの続きを、ここで」
佐藤の眼鏡が、資料室の薄暗い蛍光灯を反射して白く光る。
彼は強引に距離を詰め、ひとみを書棚の角に押し付けた。
背中に当たるファイルの硬い感触が、肋骨を鈍く圧迫する。
彼の荒い鼻息が、ひとみの耳元で湿った風のように吹き抜けた。
加納の冷徹な侵略とは違う、なりふり構わぬ必死な雄の匂い。
ひとみは、その無様な欲望を喉の奥で嘲笑いながら、唇を湿らせた。
ひとみの自慢の脚は、昨夜の情事の名残で微かに重い。
ストッキングの編み目が肌を噛む感触が、背徳を思い出させた。
ナースステーションの脇を通ると、珈琲の苦い香りが漂う。
白衣の群れの中に、加納の後ろ姿を見つけて心臓が跳ねた。
彼の広い背中から、昨夜の猛々しい獣の匂いを探してしまう。
「若林さん、おはよう。顔色が少し赤いようだが」
不意に声をかけてきたのは、内科医の佐藤だった。
加納とは対照的な、柔軟剤の香りがする温厚そうな男。
だが、その眼鏡の奥の瞳は、ひとみの形の良い胸を卑しく舐めた。
「……少し、のぼせているのかもしれません」
ひとみはわざとらしく、指先で鎖骨のあたりを仰いだ。
佐藤の視線が、開いた襟元から覗く白い肌に吸い寄せられる。
電子カルテのタイピング音が、診察室の静寂を規則正しく刻む。
佐藤の手が、資料を渡すフリをしてひとみの指を掠めた。
加納の冷徹な熱とは違う、湿り気を帯びた粘りつくような体温。
「今度、美味しいワインでも……いや、失礼」
言葉を濁す彼の喉仏が、欲望で大きく上下したのを彼女は見逃さない。
佐藤が去った後、廊下には彼の安物のアフターシェーブローションの匂いが淀んでいた。
ひとみは受付の椅子に深く腰掛け、自慢の脚をゆっくりと組み替える。
タイトスカートの裏地が太腿の熱を吸い、湿った感触を伝えてきた。
「……ふふ、あからさまだわ」
指先で、まだ火照りの残る形の良い胸の輪郭をなぞる。
周囲を歩く研修医たちの靴音と、点滴カートが転がる金属音が混ざり合う。
その無機質な騒音が、ひとみの内側の淫らな渇きをさらに煽った。
午後、資料室の整理をしていると、背後の扉が重く閉まる音がした。
古い紙の埃っぽい匂いと、微かな汗の酸っぱい匂いが立ち込める。
振り返ると、そこには息を乱した佐藤が立っていた。
「若林さん……さっきの続きを、ここで」
佐藤の眼鏡が、資料室の薄暗い蛍光灯を反射して白く光る。
彼は強引に距離を詰め、ひとみを書棚の角に押し付けた。
背中に当たるファイルの硬い感触が、肋骨を鈍く圧迫する。
彼の荒い鼻息が、ひとみの耳元で湿った風のように吹き抜けた。
加納の冷徹な侵略とは違う、なりふり構わぬ必死な雄の匂い。
ひとみは、その無様な欲望を喉の奥で嘲笑いながら、唇を湿らせた。