絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第一話】: 奈落へ誘う、特急「踊り子号」 2

窓の外には、都心のビル群が消え、どんよりとした曇天の下で鈍く光る相模湾が広がり始める。

ボスの権力によって隔離されたこの一画は、不自然なほど静まり返っていた。

前の座席ではボスと美奈代がリクライニングを深く倒している。

「たけさん、彼女に『作法』を学ばせてやりなさい。身体は、一度教え込んだことを忘れてはおらんはずだ」

ボスの重厚な声が走行音に混じって響く。

それがひとみにとって、後悔出来ぬ白日夢の合図だった。

「前より少し痩せましたか。それとも、緊張で固くなっているだけか」

たけさんの大きく無骨な手が、ひとみの項(うなじ)へと回り、有無を言わさぬ力で引き寄せた。

逃げ場のない座席の隅で、ひとみの身体は容易く組み伏せられた。

もう片方の手は、彼女が毎朝几帳面に整えていた清楚な茶色のシャツのボタンを、一つ、また一つと事務的に外していく。

「……っ、ん……」

はだけた胸元。

眩しくも、透きとおる肌の艶が光る。

シャツの隙間から滑り込んだ大きな掌が、繊細な赤いレースのブラを押し退けてひとみの胸を乱暴に鷲掴みにした。

指先が食い込むほどの強固な圧。

たけさんは彼女の耳朶を、そして細い項を、獲物の味を確かめる獣のように執拗に舐め上げる。

耳元で響く湿った水音と、男の野卑な体温が、恐怖に震えるひとみの身体の奥底に、不本意な火種を点していく。

(……何なの、この熱く燃えるような感じは……)

たけさんはひとみの細い腕を掴むと、自身の股間へと強引に導いた。

「次は、君の番だ。……上野で楽しんだ『モノ』を、また元気にしてくれ」

スラックスを押し上げるほどに膨張した、質量を持った「化身」。
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