絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第二話】:純白の生贄、媚薬のティータイム 2
しかし、彼女の瞳には絶望はなく、むしろ鋭い知性と倒錯した期待が渦巻いている。
「さあ、汚れを落として。最高の『状態』で旦那様方の前に立つのよ」
美奈代の低く、有無を言わさぬ声が室内に響く。
ひとみは指示通り、大理石のシャワー室へと送り込まれた。
たけさんの指の感触、あの脂の匂い、そして無理やり教え込まれた肉体の記憶を、熱い湯で必死に洗い流そうとした。
しかし、どれだけナイロンタオルで肌を赤く染めても、魂の深淵に刻み込まれた汚辱の感覚は、澱のように心底に沈殿したまま消えることがない。
シャワーを終えた彼女たちに与えられたのは、身に纏っていることさえ危ういほど薄く、丈の短い純白のシルクのベビードールだった。
「……こんな、格好……」
控え室の全面鏡に映る自分を見て、ひとみは息を呑んだ。
(こんな格好、部屋でも、夫の前でもした事無い。
……恥ずかしいな。)
控え室の重苦しい空気の中、シャワーを終えた女性たちは、まるで出荷を待つ家畜のように力なくソファや床に身を沈めていた。
湿った肌に張り付く純白のべビ一ド一ルが、彼女たちの「商品」としての輪郭を残酷に際立たせている。
「……ねえ、あなたも『あの日』からなの?」
(……あの日?……そうね、上野へ行ったあの日。
あの日から、私の心で何かが変わって行ったのね)
隣に座った、まだ幼さの残る女子大生が、震える声でひとみに問いかけた。
彼女の瞳には、戻ることのできない日常への未練が、薄い膜のように張り付いている。
「私は、奨学金の返済が滞って……。バイト先の店長に、いい仕事があるって紹介されたのが、ここだった。断れば大学にバラすと脅されて、気づいたら車に乗せられていたわ」
(……まるで脅迫だわ。この子も不幸の星の下に生まれたのね)
「さあ、汚れを落として。最高の『状態』で旦那様方の前に立つのよ」
美奈代の低く、有無を言わさぬ声が室内に響く。
ひとみは指示通り、大理石のシャワー室へと送り込まれた。
たけさんの指の感触、あの脂の匂い、そして無理やり教え込まれた肉体の記憶を、熱い湯で必死に洗い流そうとした。
しかし、どれだけナイロンタオルで肌を赤く染めても、魂の深淵に刻み込まれた汚辱の感覚は、澱のように心底に沈殿したまま消えることがない。
シャワーを終えた彼女たちに与えられたのは、身に纏っていることさえ危ういほど薄く、丈の短い純白のシルクのベビードールだった。
「……こんな、格好……」
控え室の全面鏡に映る自分を見て、ひとみは息を呑んだ。
(こんな格好、部屋でも、夫の前でもした事無い。
……恥ずかしいな。)
控え室の重苦しい空気の中、シャワーを終えた女性たちは、まるで出荷を待つ家畜のように力なくソファや床に身を沈めていた。
湿った肌に張り付く純白のべビ一ド一ルが、彼女たちの「商品」としての輪郭を残酷に際立たせている。
「……ねえ、あなたも『あの日』からなの?」
(……あの日?……そうね、上野へ行ったあの日。
あの日から、私の心で何かが変わって行ったのね)
隣に座った、まだ幼さの残る女子大生が、震える声でひとみに問いかけた。
彼女の瞳には、戻ることのできない日常への未練が、薄い膜のように張り付いている。
「私は、奨学金の返済が滞って……。バイト先の店長に、いい仕事があるって紹介されたのが、ここだった。断れば大学にバラすと脅されて、気づいたら車に乗せられていたわ」
(……まるで脅迫だわ。この子も不幸の星の下に生まれたのね)