絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第三話】:値踏みの熱狂、欲望の検品 4

ひとみの脳裏から、昨日までの平穏な日常が、指の間からこぼれ落ちる砂のように消えていった。

明日の予定も、将来の不安も、すべてが意味をなさない。

今この瞬間、自分はただの「機能」として、男たちの指先に弄ばれている。

その圧倒的な受動性が、彼女の自意識を心地よく麻痺させていった。

「いい盛りだ。これは高値がつくぞ」

その一言が、ひとみの胸に、絶望に似た極上の悦びを刻みつける。

それは、高級車や競走馬を値踏みする、あまりにも非情で事務的な声だった。

若い男たちが、自分が目をつけた「極上の獲物」を乱暴に弄び、その純白のベビードールを剥ぎ取り、秘部の締まりを確認するために指を突き立てる。

その野卑な蹂躙を、老人は不快に思うどころか、むしろ「最高のスパイス」として楽しんでいた。

(……いい、もっと汚すがいい。若造どもの汚濁に塗れれば塗れるほど、後で私が洗い清める時の悦びが深まるというものだ)

老人の口元には、残酷なまでの歪んだ微笑が浮かんでいた。

彼にとって、他の男たちによる蹂躙は、ひとみの価値を貶めるものではなく、彼女を人間から「従順な雌」へと完璧に作り替えるための必要な工程に過ぎなかった。

「時間だ! 競りを開始する!」

司会者のハンマーが卓を叩くと同時に、会場のボルテージは沸点に達した。

一番手の元アイドルが五百万円で落札されると、熱狂はさらなる高みへと昇り詰めた。

「エントリーナンバー、二番。ひとみさん!」

ステージに上げられたひとみは、男たちの唾液に塗れ、照明の下で淫らな光沢を放っていた。

「二百万!」「三百万だ!」「三百五十万!」

数字が飛び交うたび、ひとみの中で、ひとりの女性としての尊厳が削り取られ、「数値化された物質」へと置き換わっていく。
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