絡まる残り香―滴る甘い蜜―

【第三話】:値踏みの熱狂、欲望の検品 5

自分の価値が、他者の欲望によって決定される。その絶対的な受動性に、彼女の奥底は堕ちていく快感に震え、熱く疼いた。

「……一千万円」

「ウォ………ッ」

騒然とする会場を、一瞬にして冷え切った沈黙が支配した。

最前列で杖を突く、あの爬虫類のような瞳をした老人が、ゆっくりと手を挙げていた。

「一千万円、落札! 素晴らしい寄付に感謝を!」

その瞬間、ひとみの精神を支えていた最後の糸が、ぷつりと切れた。

無機質なハンマーの音が、ひとみの運命を永遠に隔離した。

老人は満足げに立ち上がると、震える、しかし逃れられない力でひとみの細い手首を掴んだ。

「……さあ、私の部屋へ。お前のすべては、今、私の私物となったのだ」

「ハイ……」

返事はしたもの、ひとみの心は寒風が吹き荒れていた。

(……私、これからどうなるの?)

満足げにひとみのベビードール越しに透ける肌を舐めるように見つめた。

その老いた欲望の深淵に触れた瞬間、ひとみはこれから始まる「夜の世話」という名の、底なしの蹂躙を予感し、足の指先をギュッと丸めた。

ひとみは、老人の放つ枯れた死の匂いと、その深淵のような欲望の影に引かれ、光の届かない回廊へと引きずり込まれていった。

背後では、次の「商品」である女子大生や、あの女社長・雅代を巡る、地獄のような熱狂が渦巻いていた。
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