絡まる残り香―滴る甘い蜜―
【第四話】: 堕ちゆく菩薩と天狗の狂宴 1
老人の乾いた掌が、ひとみの湿った手首を強く引く。
老人の背中を追い、静謐な廊下を歩む。
湿り気を帯びた古い石壁の冷気、肌を刺すような静寂が、粘りつく沈黙と共に鼓動を刻む。
部屋の扉の前、鉄紺色のスーツを纏った女性秘書が、鋼の刃のような鋭利な眼差しで、こちらを見据えて微動だにせず立っている。
「お帰りなさいませ」
老人の姿を認めると、彼女は柳のように腰を折って深く一礼した。
秘書がドアを開ける。
ひとみの眼に飛び込んで来たのは、天狗。
(あっ……)
室内には、浅黒く日に焼けた締め込み姿の二人の男が、岩のように硬い筋肉を誇示し、隆起した腕組みをして天狗の仮面の下で呼吸を繰り返す。
(何、この異様な空気……逃げられない)
傍目からも分かる野太い化身が、食い込む締め込みに、形どられている。
(あの、ふたりと、相手させられるの……。)
老人は秘書に手を取られ、鈍い沈み込みを見せる黒革のソファーに深く腰を下ろす。
秘書は老人を座らせると、別室へ姿を隠した。
「こちらへ来なさい」
ひとみをソファーへ呼び寄せる。
言われるまま隣へ座り膝頭を、老人の腿へ
つけた。
老人の背中を追い、静謐な廊下を歩む。
湿り気を帯びた古い石壁の冷気、肌を刺すような静寂が、粘りつく沈黙と共に鼓動を刻む。
部屋の扉の前、鉄紺色のスーツを纏った女性秘書が、鋼の刃のような鋭利な眼差しで、こちらを見据えて微動だにせず立っている。
「お帰りなさいませ」
老人の姿を認めると、彼女は柳のように腰を折って深く一礼した。
秘書がドアを開ける。
ひとみの眼に飛び込んで来たのは、天狗。
(あっ……)
室内には、浅黒く日に焼けた締め込み姿の二人の男が、岩のように硬い筋肉を誇示し、隆起した腕組みをして天狗の仮面の下で呼吸を繰り返す。
(何、この異様な空気……逃げられない)
傍目からも分かる野太い化身が、食い込む締め込みに、形どられている。
(あの、ふたりと、相手させられるの……。)
老人は秘書に手を取られ、鈍い沈み込みを見せる黒革のソファーに深く腰を下ろす。
秘書は老人を座らせると、別室へ姿を隠した。
「こちらへ来なさい」
ひとみをソファーへ呼び寄せる。
言われるまま隣へ座り膝頭を、老人の腿へ
つけた。