軍神悪役令嬢ロアンナの救国譚 ~英雄の能力と幽霊の知識を借りて、勝利をつかみ取ります~【書籍1巻発売中】

47 (※第二部に続きます)

 幽霊達は、どこにでもいる。

 何十年と使った痕跡のない薄暗いこの地下牢にも、白くて丸い姿が二つ浮かんでいた。どこにでも入り込めるはずなのに、壁をすり抜けようとした幽霊がバチッと弾かれて飛んでいく。

 一瞬だけ、壁に星のマークが浮かび、続いて読めない文字が浮かんで消えた。

 口髭を生やした幽霊が、男性の声で話し始める。

『ここからも出られないか……。いったい外では、どれくらいの時間が経ったのだろう?』

 美しいネックレスをつけた幽霊が、女性の声で返事をした。

『あなた、諦めずに別の場所を調べましょう』
『そうだな』

 そのとき、鉄格子の向こうから重い扉を上けるような音がした。地下に誰かが降りてきたようだ。

『ま、また来たわ』

 ネックレスをつけている幽霊が怯えるように体を震わせた。足音が近づいてくるので、髭の幽霊は、ネックレスをつけた幽霊を守るように背後に隠す。

 鉄格子の向こう側に、燃えるような真っ赤な髪の青年が見えた。隙間からこちらを覗き込んだあと、乱暴に鉄格子を蹴りつける。

 小さく悲鳴を上げた幽霊を、髭の幽霊がしっかりと抱きしめた。

「はぁ!? こいつら、まだ闇落ちしてないのかよ! しぶとすぎんだろうが!」

 また、鉄格子が蹴られて、青年の怒声が地下牢に響く。

「さっさと諦めろ! 幽霊になったおまえたちは、普通の人間には見えねぇんだからな! 助けなんてぜってぇこねぇんだぞ!」

 激しい舌打ちのあと、赤髪の青年の足跡が遠ざかっていく。重い扉が開く音がして、すぐにバンッと乱暴に閉められた。

『行ったか……』

 まだ震えている幽霊姿の妻を、夫の幽霊は労わるように撫でた。

『もう大丈夫だよ』

 妻の目には、涙が浮かんでいる。

『あなた……。子ども達は、どうしているのかしら?』
『あの子達なら大丈夫さ。きっとうまくやってくれているよ。マックスは頼りになるし、レイも剣術の才能が素晴らしいからな』
『そうね……。そうよね』

 溢れる涙を小さな手でぬぐってあげながら、夫は妻に微笑みかける。

『早く帰ろう。じゃないと、娘の社交界デビューを見逃がしてしまうからな』
『そうだわ! あの子のために特注したドレスも、まだ着たところをみていないのに! こんなところで泣いている場合じゃないわ!』

 すっかり元気になった妻は、またすり抜けられる場所を探し始めた。

『絶対に諦めるもんですか!』
『そうだ! ここから抜け出せさえすれば、私達の勝ちだ!』

 幽霊達は、顔を見合わせでコクリと頷き合う。

『だって、あの子……。私達の娘、ロアンナには、幽霊が見えるのだから』


 つづく


***

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ここで【第一部、完】になり、つづきは【第二部】になります。
このお話は、現在、KADOKAWA様から書籍1巻が発売中です。

美麗すぎるイラストは、しがらき旭先生です。
騎士団長デュアンがイケメンすぎて、イラストを初めて拝見したとき変な声出ました。
その他のイラストも、ものすごく素敵に描いていただけましたよ♪

それでは、WEB版【第二部】の更新まで、しばらくお待ちいただければと思います。


【以下、別作品の宣伝】

〇2026/05/01
コミックス『社交界の毒婦とよばれる私~素敵な辺境伯令息に腕を折られたので、責任とってもらいます~(3巻)』発売

マンガ家様:霜月かいり先生
※電子版は、コミックシーモア様にて先行配信中です。

〇2026/05/25
コミックス『転生悪女の幸せ家族計画 黒魔術チートで周囲の人達を幸せにします(2巻)』発売予定
マンガ家様:こりすキョーコ先生
※電子版は、5/23の先行配信です

どうぞよろしくお願いいたします♪
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