甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
「でも、やっぱりおかしいよ。どうしてなの?」
朝、いつもと同じように車を見送ったあと、エレベーターで部屋へと向かいながら桜子はポツリと呟く。
それ以外はなにも変わらないことから、余計に寝る時にリビングに残る左京が不思議に思えた。
(前までは、やり残した仕事はベッドでパソコン開いてやってたのに)
もしかして、見られたら困る仕事なのか?
それとも自分とは一緒のベッドに入りたくないのか。
(考えられることはこの2つよね。でも私は左京さんのパソコンを覗き見したことないし、ベッドにも朝起きた時には普通に隣にいるし……。やっぱり訳が分からない)
常にそのことばかり考えてしまうが、桜子は部屋に戻ると気持ちを切り替え、テキパキと掃除と洗濯をこなした。
9時になるとマンションを出て料亭に向かう。
昼の営業時間が終わり、まかないを食べていると、隣の実家から紅葉が桃香を抱いて現れた。
「桜子、お疲れ様」
「お姉ちゃん! 桃ちゃんも、こんにちは」
もうすぐ3歳になる桃香は、見る度に可愛さを増す。
今も「こんにちは、さっこちゃん」とにっこり笑いかけられ、桜子は骨抜きにされていた。
「桃ちゃーん、おいで」
抱き上げて思わず頬ずりする。
「はぁ、可愛い。癒やされる」
すると紅葉が、声を潜めて桜子に告げた。
「実はね、来年桃香、お姉ちゃんになるんだ」
え?と桜子は紅葉を振り返る。
「それって、もしかして……」
2人目が?と小声で聞き返すと、紅葉は照れたように笑って頷いた。
「わぁ! おめでとう、お姉ちゃん」
「ありがとう」
「清志さんも」
カウンターの中にいる清志に目を向けると、清志も目を細めて「ありがとう、桜子ちゃん」と笑顔になる。
「お姉ちゃん、身体を大事にね。生まれてくるのを楽しみにしてるね」
「うん。ごめんね、桜子。いつまでも料亭に復帰出来なくて」
「そんなの気にしなくていいよ」
「だけど桜子だって子どもほしいでしょう? こっちのことは考えなくていいからね。左京さんと相談して、いつでも二人のタイミングで子どもつくってね」
途端に桜子の顔は真っ赤になった。
「えっ、やだ! ごめん、なんか赤裸々な言い方しちゃって」
「ううん、大丈夫」
「お父さんに聞かれないようにしなきゃ。だけど桜子、ウブだね。左京さんに大切にされてるんだ」
「あ……、うん」
「そっかー、ほんとに良かったね。今どきお見合い結婚? って最初は心配したけど、桜子には合ってたよ。左京さんは初めからお嫁さんとして接してくれてたしね。だけど立派なお家柄だから、跡継ぎのプレッシャーもある?」
そう聞かれて、ようやく桜子はそのことに気づいた。
「もしかして私、男の子を産まないとだめなのかな?」
「いや、だめってことはないと思うけど、密かに期待されたりとかは? あちらのお父様に、なにか言われたりしないの?」
「ううん、なにも。いつも優しくしてくださるよ」
「そう、良かったね。まぁ、まだ新婚さんだし。今は二人の時間を楽しんでおいたらいいよ。子ども生まれると、生活がガラッと変わっちゃうから」
「……そうだね」
その時、父が店に戻って来て「おお、桃香」と桃香を抱き上げる。
桜子は立ち上がり、また仕事を始めた。
朝、いつもと同じように車を見送ったあと、エレベーターで部屋へと向かいながら桜子はポツリと呟く。
それ以外はなにも変わらないことから、余計に寝る時にリビングに残る左京が不思議に思えた。
(前までは、やり残した仕事はベッドでパソコン開いてやってたのに)
もしかして、見られたら困る仕事なのか?
それとも自分とは一緒のベッドに入りたくないのか。
(考えられることはこの2つよね。でも私は左京さんのパソコンを覗き見したことないし、ベッドにも朝起きた時には普通に隣にいるし……。やっぱり訳が分からない)
常にそのことばかり考えてしまうが、桜子は部屋に戻ると気持ちを切り替え、テキパキと掃除と洗濯をこなした。
9時になるとマンションを出て料亭に向かう。
昼の営業時間が終わり、まかないを食べていると、隣の実家から紅葉が桃香を抱いて現れた。
「桜子、お疲れ様」
「お姉ちゃん! 桃ちゃんも、こんにちは」
もうすぐ3歳になる桃香は、見る度に可愛さを増す。
今も「こんにちは、さっこちゃん」とにっこり笑いかけられ、桜子は骨抜きにされていた。
「桃ちゃーん、おいで」
抱き上げて思わず頬ずりする。
「はぁ、可愛い。癒やされる」
すると紅葉が、声を潜めて桜子に告げた。
「実はね、来年桃香、お姉ちゃんになるんだ」
え?と桜子は紅葉を振り返る。
「それって、もしかして……」
2人目が?と小声で聞き返すと、紅葉は照れたように笑って頷いた。
「わぁ! おめでとう、お姉ちゃん」
「ありがとう」
「清志さんも」
カウンターの中にいる清志に目を向けると、清志も目を細めて「ありがとう、桜子ちゃん」と笑顔になる。
「お姉ちゃん、身体を大事にね。生まれてくるのを楽しみにしてるね」
「うん。ごめんね、桜子。いつまでも料亭に復帰出来なくて」
「そんなの気にしなくていいよ」
「だけど桜子だって子どもほしいでしょう? こっちのことは考えなくていいからね。左京さんと相談して、いつでも二人のタイミングで子どもつくってね」
途端に桜子の顔は真っ赤になった。
「えっ、やだ! ごめん、なんか赤裸々な言い方しちゃって」
「ううん、大丈夫」
「お父さんに聞かれないようにしなきゃ。だけど桜子、ウブだね。左京さんに大切にされてるんだ」
「あ……、うん」
「そっかー、ほんとに良かったね。今どきお見合い結婚? って最初は心配したけど、桜子には合ってたよ。左京さんは初めからお嫁さんとして接してくれてたしね。だけど立派なお家柄だから、跡継ぎのプレッシャーもある?」
そう聞かれて、ようやく桜子はそのことに気づいた。
「もしかして私、男の子を産まないとだめなのかな?」
「いや、だめってことはないと思うけど、密かに期待されたりとかは? あちらのお父様に、なにか言われたりしないの?」
「ううん、なにも。いつも優しくしてくださるよ」
「そう、良かったね。まぁ、まだ新婚さんだし。今は二人の時間を楽しんでおいたらいいよ。子ども生まれると、生活がガラッと変わっちゃうから」
「……そうだね」
その時、父が店に戻って来て「おお、桃香」と桃香を抱き上げる。
桜子は立ち上がり、また仕事を始めた。