甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
「へぇ、アメリカか。いいな、桜子。左京くんのお邪魔にならないようにな。左京くん、どうかよろしくお願いします」
「はい。必ず私がしっかりとお守りいたします」

平日の夜。
せっかくだから皆で顔を合わせようと、左京は仕事終わりに社長である父と一緒に料亭にやって来た。

手伝いを終えたあと、そのまま待っていた桜子と合流して、カウンターに並んで食事をする。

「左京、桜子ちゃんをハネムーンに連れて行ってないままだっただろう。ちゃんと桜子ちゃんを楽しませるんだぞ? 桜子ちゃん、左京になんでも買わせてやっておくれ」

左京の父はお酒を飲みながら上機嫌でそう言う。

「私、左京さんと一緒に行けるだけで幸せで。左京さん、約束のお店に連れて行ってもらえますか?」

桜子の言葉に、左京の父が「おっ、ブランドのお店か? いいな、なんでも買ってもらうといいよ」と頷いた。

「いえ、アメリカのカフェです。私の好きなシェイクが、おかわりと一緒に大きなグラスで2杯分出てくるって」

は?と左京の父は呆気に取られた。

「おい、左京。桜子ちゃんをどんな扱いしてるんだ? 高級レストランならまだしも、カフェでシェイクって……」
「お義父様、私はそこがいいんです。ね、左京さん」

すると左京は、桜子に微笑む。

「もちろんそのカフェにも行くけど、桜子の行きたいところはどこにでも行く」
「左京さん、お仕事があるでしょう? 観光する時間は取れるの?」
「朝から晩まで仕事する訳じゃないよ。あ、夜に現地の関係者を集めたパーティーがある日は、桜子も来てくれると嬉しい」
「分かりました。それなら、また着物を持って行こうかな」
「そうだな。渡米前に、頼んであった桜の色留袖が仕上がると思う」
「わぁ、楽しみ!」

笑顔を輝かせる桜子を、穏やかに見つめる左京。

そんな二人を見て、父親同士がしみじみと語る。

「桜子ちゃんと結婚出来て、左京は本当に幸せ者だな」
「こちらこそですよ。一般家庭の娘をお嫁にもらってくださって、橘さんと左京くんには感謝してもしきれません」
「この二人を見ていると、こちらまで嬉しくなる」
「そうですね。橘さん、どうか末永くよろしくお願いします」
「もちろん」

父親同士、二人で小さく乾杯した。
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