甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
小さな悩みはあれど、桜子はアメリカ行きを楽しみにしながら、左京と幸せな日々を重ねる。
橘ホールディングスについての勉強を重ね、改めてその手広い事業と将来への大きなビジョンに圧倒された。
(お義父様も左京さんも、本当にすごい方なのよね)
足を引っ張らないようにしなければと、桜子は気を引きしめる。
そんな中、色留袖が仕上がったと連絡が来て、左京と一緒に呉服屋を訪れた。
「こんにちは、雅子さん」
「桜子様、左京様、いらっしゃいませ。お着物仕上がっておりますよ。早速ご覧ください」
奥座敷に案内されると、衣桁と呼ばれる鳥居のような形の衣紋掛けに、薄桃色の色留袖が掛けられていた。
「……なんて美しいのかしら」
まるでそこに情景が浮かぶように、優しい色合いの桜の柄が輝いて見える。
「桜子様、袖を通してみてくださいませ」
「はい」
左京を残して、和室を隔てたふすまの向こうで、桜子は早速雅子に着付けてもらう。
袖を通す時は身が引きしまる思いがした。
スッと雅子がきれいな所作で、桜子に着付けていく。
自然と背筋が伸び、心が浄化される瞬間。
髪を結い上げてから、姿見に全身を映してみた。
「まあ……」
雅子が感極まったように言葉を失くす。
「本当にお美しいです。この着物も桜子様に着ていただけて、命が吹き込まれたかのようですわ」
「ありがとうございます。大切に仕立てていただき、心から感謝いたします」
「こちらこそ。ご用命を賜り、大変光栄でした。では左京様にも見ていただきましょう」
雅子は、向こう側にいる左京に声をかけてから、ふすまを大きく開いた。
「……桜子」
左京が驚いたように呟く。
「はい。あの、いかがでしょうか?」
緊張の面持ちでそっと視線を上げると、左京は見たこともないほど嬉しそうに目を細めていた。
「とてもよく似合っている。本当に美しい」
「え……、ありがとうございます」
「だが困ったな。これほどまでにきれいな桜子を、誰にも見せたくない。アメリカのパーティーではドレスにするか?」
ええ?と桜子は驚く。
「そんな、せっかく仕立てていただいたのに……」
「ああ、そうだな。分かった。でも桜子、絶対に俺のそばを離れるなよ?」
「はい」
ふと見ると、雅子が口元を袖口で覆い、目を潤ませていた。
「雅子さん、どうかしましたか?」
「ちょっと、あの、動悸が……」
「えっ、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。お肌が艶めきそうですわ。ふふふ」
なにやら楽しそうな雅子に、桜子と左京は顔を見合わせて首をひねる。
「さあ、ではお茶と和菓子をご用意いたします」
仕切り直して雅子がそう言い、二人は美味しく味わってから、大切に着物を持ち帰った。
橘ホールディングスについての勉強を重ね、改めてその手広い事業と将来への大きなビジョンに圧倒された。
(お義父様も左京さんも、本当にすごい方なのよね)
足を引っ張らないようにしなければと、桜子は気を引きしめる。
そんな中、色留袖が仕上がったと連絡が来て、左京と一緒に呉服屋を訪れた。
「こんにちは、雅子さん」
「桜子様、左京様、いらっしゃいませ。お着物仕上がっておりますよ。早速ご覧ください」
奥座敷に案内されると、衣桁と呼ばれる鳥居のような形の衣紋掛けに、薄桃色の色留袖が掛けられていた。
「……なんて美しいのかしら」
まるでそこに情景が浮かぶように、優しい色合いの桜の柄が輝いて見える。
「桜子様、袖を通してみてくださいませ」
「はい」
左京を残して、和室を隔てたふすまの向こうで、桜子は早速雅子に着付けてもらう。
袖を通す時は身が引きしまる思いがした。
スッと雅子がきれいな所作で、桜子に着付けていく。
自然と背筋が伸び、心が浄化される瞬間。
髪を結い上げてから、姿見に全身を映してみた。
「まあ……」
雅子が感極まったように言葉を失くす。
「本当にお美しいです。この着物も桜子様に着ていただけて、命が吹き込まれたかのようですわ」
「ありがとうございます。大切に仕立てていただき、心から感謝いたします」
「こちらこそ。ご用命を賜り、大変光栄でした。では左京様にも見ていただきましょう」
雅子は、向こう側にいる左京に声をかけてから、ふすまを大きく開いた。
「……桜子」
左京が驚いたように呟く。
「はい。あの、いかがでしょうか?」
緊張の面持ちでそっと視線を上げると、左京は見たこともないほど嬉しそうに目を細めていた。
「とてもよく似合っている。本当に美しい」
「え……、ありがとうございます」
「だが困ったな。これほどまでにきれいな桜子を、誰にも見せたくない。アメリカのパーティーではドレスにするか?」
ええ?と桜子は驚く。
「そんな、せっかく仕立てていただいたのに……」
「ああ、そうだな。分かった。でも桜子、絶対に俺のそばを離れるなよ?」
「はい」
ふと見ると、雅子が口元を袖口で覆い、目を潤ませていた。
「雅子さん、どうかしましたか?」
「ちょっと、あの、動悸が……」
「えっ、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。お肌が艶めきそうですわ。ふふふ」
なにやら楽しそうな雅子に、桜子と左京は顔を見合わせて首をひねる。
「さあ、ではお茶と和菓子をご用意いたします」
仕切り直して雅子がそう言い、二人は美味しく味わってから、大切に着物を持ち帰った。