甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
ホテルに戻ってランチを食べると、少し部屋で休憩する。

夕方になると、桜子はパーティーの支度を始めた。

日本から持って来た桜の色留袖に着替えると、左京は目を細めて見惚れる。

「きれいだな、桜子。アスペンの雪の地に咲いた桜。橘の旅館が目指すもの、そのものだ」
「そんな大げさな……」
「いや、どんなプレゼンよりも説得力がある。桜子の美しさは俺の理想であり、俺が目指す夢だ」

はにかんでうつむく桜子を、左京はそっと抱き寄せた。

「桜子、これからもずっと俺のそばにいて。いつまでも君は俺の光であってほしい」
「左京さん……。私の方こそ、ずっとあなたのそばにいさせてください」
「ああ、もちろん。絶対に手放すもんか。やっと俺の腕の中に来てくれたんだから」

人差し指でクッと桜子のあごを持ち上げ、左京は桜子の視線を絡め取る。

男の色気をまとった魅惑的な左京の眼差しに、桜子は息を呑んだ。

「桜子、愛してる」

ささやきと共にキスが何度も降り注がれ、桜子を惑わせる。

「左京さん、だめ……。リップが、ついちゃう」
「そんな甘い声で言われて、やめられると思うか?」
「んっ、ほんとに……だめ。時間は?」

すると左京はようやく身体を離した。

「仕方ない。我慢するか」

残念そうに呟く左京に、桜子は思わず笑う。

「ふふっ、左京さん子どもみたい」
「なんだと? 言ったな、桜子。あとで覚えておけよ? 俺を本気にさせたらどうなるか、とくと思い知らせてやる」
「え、なに、怖い。暴力反対」
「俺の愛に溺れさせてやるだけだ」
「えっと、どうやって?」
「ふっ、言わせたいのか?」
「いえ、結構です。ほら、早くしないとパーティー始まりますよ?」

桜子がそそくさと離れると、左京はソファに掛けてあったジャケットにスッと腕を通してから、桜子の肩を抱き寄せた。

「行こうか、桜子。俺のそばを離れるなよ?」
「はい」

二人で部屋を出ると、パーティー会場のバンケットホールに向かった。
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