甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
ホテルに戻り、交代でシャワー浴びると、リビングで紅茶を飲みながらくつろぐ。

「明後日には帰国か……。なんだかあっという間ですね。でもとっても楽しかったです。左京さんと色んなところに行けて」
「俺もだ。旅館の建築が始まれば、また頻繁に様子を見に来ることになる。内装や家具選び、あとは料理のアドバイスなど、これからも桜子には大いに助けてもらいたい」
「はい。私でお役に立てるのなら、なんでもします」
「ありがとう」

二人で肩を並べて、窓の外に広がる夜景を眺めながら、静かに語らった。

「明日の夜はパッキングで大変かも。こんなにたくさんお買い物しちゃったから」

ソファーの周りに置いた大量の紙袋を見渡して、桜子が笑う。

「これだけでいいのか?もっと桜子の欲しいものを明日買おう」
「いえいえ、充分です」
「でも人のお土産ばかり選んでただろう?」
「だってそれも楽しくて。特に桃ちゃんと赤ちゃんのお揃いの服! あのお店、品揃えが良くてサイズ違いで同じ柄のお洋服がたくさんあったんです。可愛いだろうなぁ、きょうだいでお揃いなんて」

とろけそうな表情を浮かべる桜子に、左京は小さな紙袋を差し出した。

「もう1つお揃いの服を買ったんだ。生後半年になったら着せてあげて」

え?と、桜子はキョトンとしながら紙袋を見つめる。

「これ、さっきのお店の? 着せてあげるって、誰にですか?」
「桜子と俺の赤ちゃん」

桜子は、ハッと息を呑む。

「桜子が言ってただろ? いつか俺との赤ちゃんに着せたいって」
「……それを買ってくれてたの?」
「ああ。俺も楽しみにしたいから」

桜子の目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

紙袋を両手で受け取ると「開けてもいい?」と涙声で尋ねる。

「もちろん」

左京が微笑んで頷くと、桜子は小さな箱を取り出して、そっとリボンを解く。

ふたを開けると、昼間手にしながらうっとりしていた白いロンパースが入っていた。

桃香たちに買った服と同じ、羽根のアップリケが可愛らしい。

「ありがとう、左京さん。着せたいなぁ、私たちの赤ちゃんに」
「そうだな」

桜子は涙で緩んだ瞳で、左京を見上げる。

「左京さん。私、あなたとの赤ちゃんが欲しいです」

そんな桜子を、左京は真っ直ぐに見つめた。

「大丈夫か?」

桜子はコクンと頷く。

「私、初めてなのでなにも分からないけど、それでもいいですか?」
「もちろん。でも無理はしなくていい」
「無理ではないです。私、左京さんと結ばれたいから」
「……分かった。おいで」

左京は優しく桜子の手を引いて寝室に向かった。
< 81 / 108 >

この作品をシェア

pagetop