兄になった先輩を好きだった

第7章 再婚相手の家

体育祭が終わってから、数日が過ぎた。

放課後の体育委員会も少し落ち着いて、
橘先輩と話す時間も、前より少なくなった。

それでも。

廊下ですれ違うと、

「藤沢」

と声をかけてくれる。

「お疲れ」

ただそれだけなのに、胸が少し嬉しくなる。

(やっぱり好きだな)

そんなことを思いながら、家に帰る。

その日の夜だった。

「美羽」

母が声をかける。

「今度の日曜日、例の人に会ってほしいの」

例の人。

再婚相手。

「うん」

私は頷いた。

「分かった」

少し緊張はするけど、母の幸せなら応援したい。

それだけだった。

そのときは、まだ――

何も知らなかった。

---

日曜日。

母と一緒に、知らない住宅街を歩いていた。

「この家だよ」

母が指差す。

白い二階建ての家だった。

少しだけ深呼吸する。

「緊張する?」

母が聞く。

「ちょっと」

「大丈夫」

母は笑った。

「優しい人だから」

インターホンを押す。

ピンポーン。

数秒後、ドアが開いた。

出てきたのは、優しそうな男の人だった。

「いらっしゃい」

母が少し照れたように言う。

「こんにちは」

私は軽く頭を下げる。

「こんにちは。美羽ちゃんだね」

その人は優しく笑った。

「中に入って」

玄関に入る。

靴を脱ぐ。

そのとき――

二階から足音がした。

階段を降りてくる音。

トン、トン、トン。

誰かが降りてくる。

私は何気なく顔を上げた。

そして。

時間が止まった。

階段を降りてきたのは――

**橘先輩だった。**

一瞬、理解できない。

頭が真っ白になる。

先輩も止まっていた。

階段の途中で固まっている。

「……え」

小さく声が漏れる。

先輩の目が大きくなる。

「……藤沢?」

母が不思議そうに言う。

「知り合い?」

言葉が出ない。

先輩も何も言えない。

すると、再婚相手の人が笑った。

「そうか、同じ学校だったのか」

そして、普通に言った。

「紹介するね」

その一言が、胸に落ちる。

「俺の息子の――」

世界がゆっくり崩れる。

「**颯斗だよ。**」

先輩の名前。

私が好きな人の名前。

つまり。

つまり――

母が続ける。

「これから家族になるんだよ」

その言葉で、全部分かった。

胸がぎゅっと締めつけられる。

橘先輩が、小さくつぶやく。

「……まじか」

私も同じだった。

信じられない。

だって。

私は。

**好きな人と、兄妹になる。**
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