元恋人と契約結婚したら溺愛が止まりませんでした
私は答えられなかった。

契約結婚。そんな言葉を説明できるわけがない。

羽奈さんは小さく笑った。

「まあ、いいわ」

そして静かに言った。

「私はまだ、遼さんのこと諦めていないので」

その目は笑っていなかった。

「遼さんは、優しい人よ」

ゆっくりと続ける。

「でもね、本当に欲しいものは必ず手に入れる人でもある」

私は黙ったままだった。

羽奈さんはリビングのドアの前で立ち止まる。

「あなた」

振り返って言った。

「遊ばれていないといいわね」

そのまま羽奈さんは帰っていった。

ドアが閉まる音が響く。

私はしばらく動けなかった。

夜になって、ソファに座り込む。

胸がざわざわしている。

遼の婚約者。

その言葉が頭の中で何度も響く。
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