最低で大嫌いなあなた、結婚してください
海を見る男
八月の終わり、一人の男性が堤防に座り、ぼんやりと海を眺めていた。
白Tにデニムというカジュアルな格好の彼は、口に煙草を咥えている。
煙草は吸っているというより、ただ咥えられているだけと言っていい。
海風に紫煙が流され、先端はあっという間に白くなってポロポロと崩れていく。
いつもの彼なら「風の強い日は煙草がすぐ減って腹が立つ」と言っていただろう。
しかし今の彼はそんな事も気にせず、最初の一口を吸ったあとはただ口に咥えたまま、思考に耽っていた。
ザァン……と波が打ち寄せる音がし、青い海が日差しを反射して煌めく。
海鳥が鳴き、彼が美味しい物を持っていないか品定めをするように、ときおり低空飛行をしてくる。
男性の視線の先にはサーファーたちがいて、彼らはサーフボードの上に乗って波を操り、水中に落ち、またパドリングしていく。
いつもなら「下手くそだな」と毒づいただろうか。
だが今の彼は、目に映る光景に何の感情を持てないほど放心していた。
どれだけ時間が経ったのか、空は燃えるように赤くなり、ラベンダー色と紺色に支配されたあと、濃紺に変わってゆく。
煙草は、何本無意味に火を付けられ、消えていったか分からない。
暗闇に包まれたまま、彼はポツリと一人の女の名を呟いた。
「鞠花……」
潤んだ目から透明な雫が流れ、顎から落ちた。
白Tにデニムというカジュアルな格好の彼は、口に煙草を咥えている。
煙草は吸っているというより、ただ咥えられているだけと言っていい。
海風に紫煙が流され、先端はあっという間に白くなってポロポロと崩れていく。
いつもの彼なら「風の強い日は煙草がすぐ減って腹が立つ」と言っていただろう。
しかし今の彼はそんな事も気にせず、最初の一口を吸ったあとはただ口に咥えたまま、思考に耽っていた。
ザァン……と波が打ち寄せる音がし、青い海が日差しを反射して煌めく。
海鳥が鳴き、彼が美味しい物を持っていないか品定めをするように、ときおり低空飛行をしてくる。
男性の視線の先にはサーファーたちがいて、彼らはサーフボードの上に乗って波を操り、水中に落ち、またパドリングしていく。
いつもなら「下手くそだな」と毒づいただろうか。
だが今の彼は、目に映る光景に何の感情を持てないほど放心していた。
どれだけ時間が経ったのか、空は燃えるように赤くなり、ラベンダー色と紺色に支配されたあと、濃紺に変わってゆく。
煙草は、何本無意味に火を付けられ、消えていったか分からない。
暗闇に包まれたまま、彼はポツリと一人の女の名を呟いた。
「鞠花……」
潤んだ目から透明な雫が流れ、顎から落ちた。
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