最低で大嫌いなあなた、結婚してください

最低な男

 鳳祥吾(おおとりしょうご)は元は鳳財閥と呼ばれた巨大な財閥一族の末裔だ。

 千八百年代に先祖が両替専用の商店を始め、現在ではフィナンシャルグループや損害保険など金融業に力を入れた大企業となっている。

 祥吾は『かなえフィナンシャルグループ』内の大手銀行『かなえ銀行』の代表取締役社長を担っていた。

 資本金は一兆五千億近くに及び、売上金は子会社の連結を含め三兆三千億に上る。

 少し前に祖父が最前線から身を引いて会長となり、父が『かなえフィナンシャルグループ』の代表取締役社長を務める事になり、息子の彼が『かなえ銀行』を牽引する牽引する事になった。

 現在祥吾は三十四歳で、男盛りだ。

 キリリとした眉に二重の幅が広い目元、濃く長い睫毛に通った鼻筋、そして形のいい唇。

 当たり前にモテるが、まだ決まった相手はいない。

 両親は「生きているうちに孫を見せてほしい」と言っているが、祥吾は一人のほうが身軽でいいと、見合いの話が出るたびに用事をつけて拒絶していた。

 両親の連れて来る女性は、似たり寄ったりだ。

 企業の社長令嬢、または由緒ある家柄の息女、みんな大人しくて聞き分けが良く、――恐ろしくつまらない女だ。

 何でも「はい」と従順に返事をするのは、部下だけで十分だ。

 かといって、自分に反抗する生意気な女が好きな訳でもない。

 彼の母校は、偏差値の高い有名大学だ。

 女友達は皆優秀でウィットに富んだ会話のできる面白い人たちだが、彼女らを妻や恋人にするのは御免被りたい。

 結局のところ、彼は自分を気持ち良くさせてくれる存在が好きなのだ。

 適度におだてて、甘えて嫉妬するフリをして、大事なところでは口を出さずしつこくしない。

 彼が求める女性は、意外と少ない。
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