アラフォーバツイチ、花ざかり。
 取り出してみると、透也のアイコンとメッセージが表示される。

【無事に帰れたか? 風邪ひくなよ】

 心配してくれる気持ちが嬉しくて、心の奥がほわっと温かくなる。しかしすぐに、この優しさに特別な感情が混ざっているわけではないと思い直し、胸の温かさもドキドキも切なさへと変わっていった。

 意地悪で、遠慮がなくて、でも私が困っている時は的確な言葉や行動で助けてくれる、優しい人。

 彼といると、自分が〝女〟であることを実感させられる。ときめきや苦しさ、欲情。どれもひとりでは感じられないものだ。

 こうなるのは透也といる時だけ。それはどうしてなのか、ずっと自分をごまかしていたけれど、もう認めざるを得ないかもしれない。

「懲りないなぁ……」

 スマホを持つ手をぶらんと力なく下げ、ため息混じりに呟いた。

 過去に何回も失敗してきて、誰も好きにならないほうがラクだと学んだはずなのに、私はまた未来のなさそうな相手に惹かれている。

 おもむろにジャケットを顔に近づけると、雨にほとんど上書きされているものの、かすかに彼の匂いがする。胸が締めつけられて、それをぎゅっと握った。

 膨らんでいく気持ちが、簡単には萎められないことも知っている。私はとっくに、後戻りできないところにいるのかもしれない。


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