アラフォーバツイチ、花ざかり。

 ──出会った時から、彼女は面白い存在ではあった。趣味で訪れたモデルハウスで客に語っていた彼女の自論を、興味深くてつい聞き耳を立ててしまったのが始まりである。

 仕事では完璧を求めてしまう俺にとって、『たとえ失敗したとしても、工夫次第で改善できることは多いですから。限られたものの中で知恵を絞って暮らしていくのも楽しいですよ』という彼女の考え方は新鮮だった。

 自分の技量や知識を駆使して、客の要望にすべて答えるというのもやりがいはあるし、それがプロの建築士だとも思う。だが確かに、どの部分で後悔するかはしばらく住んでみなければわからないし、ライフステージによっても変わってくる。

 そう考えると、俺たちが謡っている〝後悔しない家づくり〟をするのは不可能に近いのかもしれない。

 だが、真琴のように肩の力を抜けば、どんな未来にも対応できる気がする。その前向きな捉え方が、素直にいいなと感じた。

 そんな彼女に対して俺があえて嫌みっぽい言い回しをするのは、どんなふうに返してくるのかを確かめたい好奇心からだったりする。物怖じせず言いたいことをはっきり口にするので、こちらも楽しくなってついからかってしまう。

 きっと嫌なやつだと思われているんだろう。俺も、真琴のことは決して嫌いではなかったが、気が強くプライドの高い女性なのだと思っていた。

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