アラフォーバツイチ、花ざかり。
 私は温かい缶コーヒーを両手で握り、満足感を抱いたまま話し始める。

「網坂さんって、やっぱりすごいね。クライアントの要望を全部汲み取りつつ、その人のライフスタイルに合わせた設計ができるところ。自分も相手も納得するまで妥協しない姿勢もすごいし、なによりセンスがあって素敵」

 今日彼の話を聞いて、どんなふうにクライアントと向き合って設計をしているのかがよくわかった。

 深い知識とセンスをフル活用し、ディテールの細部にまでこだわる。建築現場に何度も足を運んで、問題点を見つけてはすべてクリアしたものに修正する。それをぱっとできてしまう彼は、抜群の設計力の持ち主。

 これまでは、ただ偉そうに言う口だけの人なのでは?という疑心も多少あったのだが、それは見事に打ち砕かれた。同時に、またひとりレベルの高い建築士と出会えて嬉しくもあるのだ。

「あと、家が完成したらそれで終わりなわけじゃない、っていう話も。そこで幸せに暮らしてもらうまでが家づくりなんだってこと、私も忘れないようにしよっと」

 穏やかに感想を告げる私を、彼は意外そうに目をしばたたかせて見つめる。

「やけに素直だな。おだててもコーヒー以外は出せないぞ」

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