アラフォーバツイチ、花ざかり。
 結局、私は一旦部屋に戻ってDVDを取り、玄関の外で待っていた透也にそれを差し出した。

『返すのはいつでもいいから。ここのポストに入れておいてくれてもいいし』
『ありがとう。ちゃんと礼はするよ』

 そう言って微笑み、スマートに帰っていく彼を見送る私の心臓は、ずっと速いリズムを刻んでいた。

 彼と私だけの繋がりができたという実感と、お礼ってなにをしてくれるんだろうというほんのちょっとの期待が入り混じって、なんだか不思議な感覚。

 ひとりの男性のことばかり考えてそわそわしてしまうなんて、片想いしていた頃に戻ったみたいだ。

「……恋、じゃない、よね?」

 うっすら目を開き、自問自答する。

 この浮ついている感覚はそうなのか? ついこの間、さっこたちに〝もう恋なんてしない〟宣言をしたというのに、あっさり落ちてしまったのだろうか。

 いやいや、すごく久しぶりに甘い言葉をかけられたものだから、浮かれちゃっているだけよね。イケメンに優しくされたら、そりゃあドキドキするわよ。

 私は自他共に認める男運のない女。恋をするたび痛い目を見てきたのだから、もう失敗しないように気をつけないと。

 この感覚は一過性のもの。そう結論づけて、私は再び瞼を閉じた。


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