深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
「お仕事終わりですか」

「そうです。九条さんも?」

「俺は、部屋にいました。色々考えることがあって」

「えーっと、お仕事の悩みとか?」

「まあ、そうですね、仕事の悩みかな」

 会話は結局それだけで、途絶えてしまった。
 お互い初対面みたいなものなだから、そんなものだ。
 そのうち、ゆるやかにお互いのひととなりを知って、顔見知り以上の関係になっていく。

 LAMPに集まる常連客は、皆、似たような空気感を持っていた。

 必要以上に、詮索せず、けれど次第に関係性の境界がぼやけて、ただの他人ではなくなっていくのだ。

 奥のソファから、結城さんが口を開いた。

「野口さん、今日も終電ぎりぎり?」

「うん、ぎりぎり乗れました。めっちゃ走りましたけど」

「店に寄らなけれは、睡眠時間もう少し確保できるのに」

「だって、乗れても眠れないですもん」

 柚子の言葉に結城さんが、忍び笑いを落とす。
< 11 / 63 >

この作品をシェア

pagetop