深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
「あの人――奥でいつも目を閉じてるけど、寝てるわけじゃなくて考えてるらしいですよ」

「よく分かりますね」

「なんとなく?」

 首を傾げる柚子に対して、九条が少し微笑む。

「なんとなくで、そこまで分かるんですか」

「観察が仕事みたいなもの……だからですかね~」

「えっと、野口さんは、どんなお仕事されているんですか」

 A&Rの仕事を説明するのは少し手間がかかる。

「レコード会社で、アーティストを探したり育てたりする仕事です。A&Rって言います」

「あー、アーティスト・アンド・レパートリー」

 九条がよどみなく言った。
 一度ですらすらと言える人間に、業界外で出会ったことが未だに無い。

「もしかして、音楽に携わっていらっしゃいます?」

 と、言いながら、柚子は自分がルール違反を犯している事に気が付く。
 LUMPでは原則的にプライベートに関する詮索は、御法度。
 会話を交わす仲になれば、自然と皆、自分のことも話すようになるから。
 とはいえ、柚子自身はあまり、自分について聞かれることに抵抗は無かった。

「内緒です」

「えっとそしたら……どんな音楽が好きなんですか」

 咎める様なマスターの視線に気が付いて、柚子はあわてて質問の方向を少し変えた。

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