深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
 何、作ろうかな。
 時間もあるし、少しは手の込んだものを作れそうな気もするけれど、今暮らしている部屋には、調理器具など殆ど揃えていなかった。
 それに、自分が何を食べたいかもよく分からない。
 色鮮やかなパプリカに目を惹かれたが、パプリカを使った料理が全く思い浮かばない。
 せいぜい、切って、炒める程度である。
 それは果たして料理といえるのだろうか、という疑問に答える相手は居ないので、無難にじゃがいもと玉ねぎと手に取る。
 
「あ、野口さん」
 
 声がして振り返ると、九条がカゴを下げて、大根を片手に立っていた。
 意外過ぎる組み合わせに、柚子は持っていた玉ねぎを一瞬落としそうになる。
 
「あ、九条さん……も、お買い物ですか?」
 
「うん、冷蔵庫が空になってしまいました」

 自分と全く同じ行動原理に、親近感がわいてしまう。
 スーパーで見る九条は、カフェの暗い店内で物静かに座って、何かいつも思案している印象の、真反対だ。
 九条のカゴには、大根と、豚バラと、ごぼうと、味噌。

 これは……
 
「豚汁? 作るんですか」
 
「良くわかりましたね。そのつもりです」
 
「わー、いいですね。私は何作ろうか悩んでいる所です」
 
 我ながら当たり障りの無い感想だと思っていると、九条がさらりと「一緒に食べますか」と続けた。
 
「え」
 
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