深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
フードを深く被り、顔の半分が影に沈んだ、粗い画質の写真。
けれど、その輪郭を目にした瞬間、柚子の指が止まった。
見覚えがある、どころではない。
それは、ここ数ヶ月、自分が最も近くで見つめてきた顎のライン。
LAMPのカウンターで。
あの物憂げな角度。
ギターを爪弾いた時の、真剣な眼差し。
書斎へと戻っていく、あの静かな横顔。
「え……嘘。嘘だよね」
混乱する思考を抱えたまま、柚子は立ち上がり、思わず書斎へと続く階段を降りる。
誰何のノックをしたものの、返事を聞くより早くドアを開けると、PCに向かっていた九条がゆっくりと顔を上げた。
「また余震ですか? 震度3以下の通知は設定していなくて」
九条が、申し訳なさそうにヘッドホンを外す。
「いえ、違う、違うんです。あの、九条さん、少しだけ、聞いていいですか」
柚子は、混乱しながらも、震える手でスマートフォンの画面を突きつけた。
SNSに写された、蒼の横顔。
「これ……これは、九条さん、ですよね」
一秒、いや、もっと長い沈黙が流れた。
九条は画面を見つめ、それから柚子の目をまっすぐに見返した。
逃げることも、誤魔化すこともしない。
その深く静かな眼差しが、何よりの肯定だった。