深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
「多めに作ろうかな、と思っているので」
 
 唐突過ぎるお誘いに、一瞬だけは考えながらも「じゃあ、お惣菜とか飲み物買っていきます」と無意識のまま答えていた。

 九条の部屋は当たり前だけど、柚子の部屋の隣である。
 鍵を開ける音も同じだ、とバカみたいなことを考えていた。
 
 室内の間取りは柚子の部屋と同じ。
 ただやはり、男性の一人暮らしである、と言われると納得してしまうような色合いをしている。

 殺風景ではないし。
 生活感もある。

 中央にはカウチがあり、ギターが一本立てかけてあって、キーボードが床に一台。
 ローテーブルにもう一台のキーボード。
 窓際にあるデスクにはラップトップPCとノートが広げてあった。

 柚子の視線は、ノートに吸い寄せられた。
 音符のようなものが書いてある気がしたから。

 とはいえ、他人の部屋で、他人の私物を観察するのは行儀が悪すぎる。
 九条がそのままキッチンに向かったので、柚子も慌てて後に続く。
 
「座っていてください」
 
「手伝います!」
 
「んー、じゃあ大根、切ってもらえますか」
 
 二人で並んでキッチンに立つと、想像以上に狭い。

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