深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
「……気づいていましたか」
「さっき、やっと」
「うん」

 九条の声は、いつも通り穏やかだった。
 けれどその声には、秘密を共有できたことへの微かな安堵が滲んでいるようにも聞こえた。

「LAMPのみんなは、知ってたんですか」
「マスターは知己なんですよ。亡くなった叔父の」

 柚子の喉から思わず、乾いた笑いが漏れた。

 トシさんの「どこかで見た顔」という言葉も、結城さんの「そろそろ言ったら」という促しも、マスターの「かもね」という微笑みも。
 すべてはこの真実に繋がっていたのだ。

「野口さん」

 九条が椅子から立ち上がり、一歩近づいた。

「怒っていますか。俺が黙っていたこと」

 怒りよりも先に、眩暈のような混乱があった。
 今まで隣に座っていた男が、そして仕事上の重要人物だった。
 と、同時に脳裏を掠める、聴かせてくれた『Chamomile』の旋律。

「えっと……少し、整理させてください」

 柚子はそう絞り出すのが精一杯だった。
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