深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
 初対面ではないけれど、大して知らない相手の、しかも異性の部屋に上がり込むのは、何か(・・)が、起こりうる可能性もある。

 残念ながら、九条に限っては、それはなさそうだが。
 深酒は気を付けようと、心の中でこっそり決意をする。
 
「一月って、レコード会社は忙しいんですか」
 
「年明けすぐは少し落ち着いてます。二月から年度末に向けてまた動き出すかなあ」
 
「今日みたいに休める土曜日は、あまりないんですか」
 
「年に数回あるかないか、です。ほぼリリイベ……リリースイベントとかライブとか。同期の担当しているイベントにも駆り出されちゃいますし。まあ私現場仕事好きなんで」
 
 九条が豚汁を、器にいれながら振り返った。
 
「そしたら……せっかくの休日なのに、もったいない過ごし方してますね、こんなところで」
 
「え、全然です!」

 全然、もったいなくなかった。

 確かに、何も無い休日は貴重だけれども。
 ほとんど何もしていないうちに、こうして手料理?に預かってしまっているのは、もったいないと言える状況だろう。
 しかも、自分で食事のメニューを考えず、ただ提案にのっかるだけ。
 
 手作りの豚汁は、実家ぶり。 
 ごぼうの風味が効いていて、味噌の量がちょうどよくて、体が温まる。 
  
「おいしい! ほっとしますねこの味……」
 
「よかったです」
 
「九条さん、料理できるんですね」
 
「一人暮らしが長いからそれなりに」
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