深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
レイ君が「お気をつけて」と扉を押さえてくれたのと同時に、また疲れ果てた知らない顔の集団がLAMPへと続く階段を降りて来た。
街は相変わらず暗いままだ。
時刻はだいたい午前三時。
出社前に睡眠時間は確保できるだろうか、と一瞬だけ胡乱な事を考えてしまう。
そもそも明日は、仕事になるのかもわからないと言うのに。
信号も、店の明かりも、全部消えたまま。
大規模停電で光害がなくなったせいか、星が見える。
東京で、こんなに星が見えることに感動したのは柚子だけではなかったようだ。
「うお、星、すごい見えますね」
真下が上を向いて言った。
九条が顎を上にあげる。
横顔のシルエットに、瞬間どきりと弾む胸に、思わず柚子は足を止める。
エレベーターは当然ながら稼働していない。
居住しているフロアが五階で良かったと、つくづく思う。
手摺りの表面がざらついていた。
懐中電灯で照らすと、壁面に塗りこめられていたであろう塗料が剥がれ落ち、亀裂が見える。
「これ、割れたんですかね、地震で」
真下が壁の傷を心配そうに見やり、九条も柚子もわからないと首を振る。