深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
 三十代前半くらい。
 フードの奥から覗くのは、驚くほど整った、なんとなくだけど、疲労の色を滲ませた瞳。
 
 まあ既に時刻は3時過ぎ。
 皆、似たような疲労を抱えていて当たり前の時間帯。

「同じマンションですね」

 彼が先に口を開いた。
 耳の奥にす、と入り込んでくる、心地の良い低音。

「あ、はい。何階ですか」

「五階です」

 柚子は少し間を置いた。

「えっと、私も五階です」

 チン、と無機質な音を立ててエレベーターの扉が開く。

 無言のまま乗り込み、『5』のボタンのランプを見つめた。

 やがて扉が開き、それぞれの部屋に向かって歩き始めたとき。
 柚子はふと足を止め、息を呑んだ。

 彼が足を止めて鍵を取り出したのは、501号室の前。
 自分の部屋である、502号室の、真隣。
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