深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった

第二話 となりの朝、となりの夜

 翌朝、目が覚めたのは八時二十分。

 今日は十時に社内会議がある。
 昨夜もまた、あんな時間まで起きていたのに、こうしてまだ、ちゃんと朝に起き上がれるのは、体内時計がまだ完全に死んでいない証拠だった。
 重い身体を引きずって洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗って、鏡の前で手早くメイクを施し、「レコード会社のA&R」へと武装を済ませる。

 まだ、ちゃんと朝に起き上がれるのは、体内時計がまだ死んでいない証拠だ。

 冷蔵庫を開けて、賞味期限が昨日までのヨーグルトを発見するも、数秒だけ眺めて、日付を見なかったことにしてそのまま胃に流し込む。
 
 この仕事は、何よりも体力が資本なのだ。

 朝食を抜いて倒れるわけにはいかない。
 かろうじてそれだけは、柚子が入社以来ずっと守っているマイルール。

 玄関を出ると、頭の中はすでに仕事モードに切り替わっている。
 会議までにメールチェックも済ませたいし、出来るならば月末の立て替え払いの清算を、経理のシステムに登録しておきたい。
 エレベーターのボタンを押したところで、ふと背後に微かな足音と気配を感じて振り返った。

「あ……」
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