深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった

 九条の顔が、再び近づく。

「逃げても無駄だと言いましたよね」

「それは……さっき言った……っ」

 額に。
 柔らかい唇が触れる。

「奏翔、さん……」

 うなじに。

「待って……」

「恥ずかしいと言う人には、もっと恥ずかしいことをしますよ」

 鎖骨のくぼみに、吸い付くような熱。

「かなで、さん……」

「はい」

「……好き、です」

 九条の動きが止まり、ちらりと柚子の様子を伺う。

「もう一度」

「も、言いました!」

「お仕置き、続けます」

「……だ、大好きです」

 九条は、満足そうに微笑んだ。

「ありがとうございます、柚子さん。俺も、死ぬまで貴女を愛します」

 部屋にはまだ、粗削りなデモ音源が流れていた。
 3コーラス目の、メロディ。

 朝の光に満たされた部屋の中で、柚子は九条の腕に抱かれながら、無意識に旋律をなぞりながら。

 ――ああ、やっぱり。この曲、好きだな、と。

 
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