深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
囁きが唇に触れるほど近づいた瞬間、柚子の思考は真っ白に弾けた。
重なったのは、いつもの優しいキスではなかった。
喉の奥まで支配しようとするような、激しく、甘い、深い。
カモミールティーの微かな余韻と、彼の熱い体温が、柚子の口内を満たしていく。
「ん……っ」
九条の舌が、柚子の唇の裏側を、そして敏感な上顎を丁寧になぞる。
逃がさない。
一滴の吐息さえも、音楽の中に閉じ込めてやる。
そんな強烈な独占欲が、キスのたびに柚子の身体へと流し込まれてくる。
ひざ掛けの中で、九条の手が柚子の腰をぐいと引き寄せ、自分の膝の上へと乗せた。
対面するような形になり、柚子は彼の肩に必死にしがみつく。
テレビの中では、自分たちが心血を注いだ主題歌が最高のリフレインを響かせているというのに、今の柚子には、耳元で繰り返される九条の声と、服越しに感じる彼の熱量しか感じられなかった。
「奏翔、さん……あの……ドラマ」
「見なくていい。……俺だけを見て」
九条は柚子のシャツのボタンに指をかけ、鎖骨のくぼみに深く歯を立てた。
「一昨日、他の男に笑いかけていた分……たっぷり、取り戻させてもらいますよ」
「だって、そんなの……仕事、だもん……」
「柚子さんが俺の歌に震えてくれるのも、こんなふうに俺の指先で蕩けてくれるのも。……全部、俺だけの特権ですからね」
九条は再び柚子の唇を奪い、深い、深い沈黙へと二人を沈めていった。
窓の外では、雪が静かに降り始めている。
けれど室内は、カモミールの香りよりもずっと甘く、狂おしいほどの愛の熱だけが、永遠に続いていくかのように満ち溢れていた。