深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった

 店を出ると、冷たい冬の風が柚子の頬を撫でた。
 九条が、自分の巻いていたマフラーを外し、柚子の首元にぐるりと巻きつける。
 彼の体温と香りが、柚子をすっぽりと包み込んだ。

「寒くないですか」

「大丈夫です。奏翔さんこそ、薄着なのに」

「俺は、柚子さんが隣にいれば平気ですから」

 九条はそう言って、柚子の冷えた手を自分のコートのポケットへと引き込んだ。
 ポケットの中で、二人の指先が硬く、解けないように絡み合う。
 見上げた夜空には、冷たくも美しい星が瞬いていた。

「……帰りましょうか。寒いから、お湯張ってお風呂一緒に入りましょうね」

「え、一緒に?」

「ダメですか?」

「ダメじゃないけど……恥ずかしいですね」

「うん、その顔可愛い。何か、考えました?」

「考え、……もう! からかってる! 酔ってるでしょ!? 奏翔さん!」

 世界がどれほど騒がしく彼を求めても。
 深夜2時、彼が帰る場所は、ただ一人の隣だけ。



<HAPPY END>
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