深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
断る理由もないので、そのまま歩調を合わせていた。
昨夜は暗くてよくわからなかったが、並んで歩くと、彼の方が頭一つ半ほど背が高いことがわかった。
柚子の身長が、いわゆる日本人女性の平均値なので、隣を歩く彼は、かなりの高身長だ。
朝の中目黒は、深夜と全く違う顔をしていた。
川沿いの遊歩道には、楽しそうに犬の散歩をしている人、白い息を吐きながらジョギングしている人、自転車で慌ただしく保育園に子どもを連れていく人。
昨夜二時過ぎに、静寂の中を重い足取りで歩いた記憶と、今の生活感に溢れた景色が上手く繋がらない。
「仕事は忙しいんですか?」
彼がぽつりと呟くように言う。
寝起きの頭で、ただ思いついたことを口にしていると言った印象を受ける。
「毎日時間に追われてますし。でもまあ好きなので」
柚子が笑って答えると、彼は少しだけ目を伏せ、「うん」と、自分自身に言い聞かせるように小さく頷いた。
その横顔が、朝の光の中なのにひどく翳って見えて、柚子は胸の奥が少しだけざわつく。
やがて、駅の改札前。行き交う通勤客の波を避けながら、柚子はパスケースからICカードを出した。
昨夜は暗くてよくわからなかったが、並んで歩くと、彼の方が頭一つ半ほど背が高いことがわかった。
柚子の身長が、いわゆる日本人女性の平均値なので、隣を歩く彼は、かなりの高身長だ。
朝の中目黒は、深夜と全く違う顔をしていた。
川沿いの遊歩道には、楽しそうに犬の散歩をしている人、白い息を吐きながらジョギングしている人、自転車で慌ただしく保育園に子どもを連れていく人。
昨夜二時過ぎに、静寂の中を重い足取りで歩いた記憶と、今の生活感に溢れた景色が上手く繋がらない。
「仕事は忙しいんですか?」
彼がぽつりと呟くように言う。
寝起きの頭で、ただ思いついたことを口にしていると言った印象を受ける。
「毎日時間に追われてますし。でもまあ好きなので」
柚子が笑って答えると、彼は少しだけ目を伏せ、「うん」と、自分自身に言い聞かせるように小さく頷いた。
その横顔が、朝の光の中なのにひどく翳って見えて、柚子は胸の奥が少しだけざわつく。
やがて、駅の改札前。行き交う通勤客の波を避けながら、柚子はパスケースからICカードを出した。