深夜2時。君のとなりで ――世界中が知っている彼を、私だけが知らなかった
「おそらく。当時、その会社でアルバイトか何かをしていたあなたが、返送用の封筒に忍ばせたのでしょう。あなたは覚えていないかもしれない。でも、この付箋の一行がなければ、俺はあの日、音楽を捨てていましたよ」
窓から差し込む朝の光が、柚子の指先を照らす。
自分が無意識に放った言葉が、一人の青年の絶望を救い、今日の『蒼』という怪物のような才能を繋ぎ止めていた。
その事実が、驚きと共に重い愛となって押し寄せる。
「……覚えていない言葉で、誰かの人生が変わるなんて」
「変わったんです。俺は、この付箋を書いた人間を探すために、この業界で生きてきたっていったら、まあ嘘になりますけど。生きていく支えではありました。中目黒であなたの隣に住んだのは、確かに偶然だったかもしれない。けれど、隣に住んでいたのがこの付箋を書いた本人だと気づいた瞬間から……俺は、あなたから離れることができなくなった」
九条が柚子の手をとり、付箋ごと優しく包み込んだ。
「す、捨てていいですか? これ」
「駄目です……俺にとっては大切な『呪い』なので、返してください」
「呪い!? 大切!?」
「ええ。柚子さんが無意識に吐いた言葉という、永遠に解けない呪縛。俺はこれからも、この言葉に縛られ、あなたに縛られていたい」
このデモの3コーラス目、本当に好きでした。
あの日の、何気ない共鳴が、今、目の前の男を形作っている。
柚子は涙が溢れるのをこらえ、その付箋を見つめる。
九条はペンを置き、柚子を再び横たわらせると、その隣に静かに滑り込んだ。
「……体、辛くないですか」
「……奏翔さん、強引すぎます」
「ごめんなさい。余裕がなかった。あんなに必死に追いかけたのは、人生で二度目でしたから」
「一度目は?」
「この付箋を受け取った時です」
九条は柚子の髪を愛おしげに撫で、彼女の耳元で囁いた。
「覚悟はいいですか。柚子さんが何度逃げようとしても、俺は必ず見つけ出す。あなたの無意識さえ、俺の音楽の中に閉じ込めて、一生逃がしません」
一生、という言葉の重さ。
普通なら震え上がるような執着なのに、なぜか今の柚子には、それが心地よい鎖のように感じられた。
「あの……」
「はい」
「えっと。……こちらこそ?」
九条の動きが止まった。
一秒、二秒。
窓から差し込む朝の光が、柚子の指先を照らす。
自分が無意識に放った言葉が、一人の青年の絶望を救い、今日の『蒼』という怪物のような才能を繋ぎ止めていた。
その事実が、驚きと共に重い愛となって押し寄せる。
「……覚えていない言葉で、誰かの人生が変わるなんて」
「変わったんです。俺は、この付箋を書いた人間を探すために、この業界で生きてきたっていったら、まあ嘘になりますけど。生きていく支えではありました。中目黒であなたの隣に住んだのは、確かに偶然だったかもしれない。けれど、隣に住んでいたのがこの付箋を書いた本人だと気づいた瞬間から……俺は、あなたから離れることができなくなった」
九条が柚子の手をとり、付箋ごと優しく包み込んだ。
「す、捨てていいですか? これ」
「駄目です……俺にとっては大切な『呪い』なので、返してください」
「呪い!? 大切!?」
「ええ。柚子さんが無意識に吐いた言葉という、永遠に解けない呪縛。俺はこれからも、この言葉に縛られ、あなたに縛られていたい」
このデモの3コーラス目、本当に好きでした。
あの日の、何気ない共鳴が、今、目の前の男を形作っている。
柚子は涙が溢れるのをこらえ、その付箋を見つめる。
九条はペンを置き、柚子を再び横たわらせると、その隣に静かに滑り込んだ。
「……体、辛くないですか」
「……奏翔さん、強引すぎます」
「ごめんなさい。余裕がなかった。あんなに必死に追いかけたのは、人生で二度目でしたから」
「一度目は?」
「この付箋を受け取った時です」
九条は柚子の髪を愛おしげに撫で、彼女の耳元で囁いた。
「覚悟はいいですか。柚子さんが何度逃げようとしても、俺は必ず見つけ出す。あなたの無意識さえ、俺の音楽の中に閉じ込めて、一生逃がしません」
一生、という言葉の重さ。
普通なら震え上がるような執着なのに、なぜか今の柚子には、それが心地よい鎖のように感じられた。
「あの……」
「はい」
「えっと。……こちらこそ?」
九条の動きが止まった。
一秒、二秒。