One year left -家族ごっこ-
「じゃあ、もう一回したら、付き合ってくれる?」


碧くんの低い声が、静寂を裂いた。


返す言葉を失った瞬間、すっと温かい指先が顔に触れる。


彼の親指が私の唇をなぞり、そのまま、顎をくいと持ち上げられた。


視線が、強制的に上を向かされる。


間近で見下ろす瞳は、いつになく暗く、冷え切った私の視界を射抜くような熱を孕んでいた。


「……私をからかうのも、いい加減にして」 


心の中を冷たく静まり返らせたまま、私は彼の大きな手を掴み、力任せに自分の顔から遠ざけた。


「からかってないんだけど」 


碧くんは挑発するように片眉を上げ、拒絶された手を気だるげにポケットへと押し込む。


「じゃあ、冗談はやめて」


「本気って言ったら、どうする?」


まっすぐな、逃げ道のない問い。


私の世界に、彼は容赦なく踏み込んでくる。


「義姉弟なんだから、無理って言う」


それが、私が出せる唯一の正解。


碧くんは、ただ唇の端を小さく吊り上げた。


「バレなきゃいいんだよ」


悪びれる様子など、微塵もない。
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