One year left -家族ごっこ-
「ダンスだってそう。今まで通ってたことを言わなきゃいい」


「え?」 


視界が一瞬、白く弾けた。


「バイトを辞めたら、ダンスを習いたい、って言えばいいんじゃない?」 


それは、私の思考のどこを探しても、最初から存在しない発想だった。


どう謝ればいいか。


お母さんを傷つけない謝罪の言葉ばかりを、私は必死に探していたのだ。


「嘘も方便って言うだろ?」 


碧くんは淡々と言い放つ。

 
知らなければ、お母さんは傷つかない……? 


胸の奥の最も深いところに、冷たい杭を強く打ち込まれたような衝撃が走る。


恐怖で消えかけていた私の決意の火は、形を変え、温度を持たない凍てついた炎となって、私の全身の血のなかで激しく燃え始めた。


嘘を重ねる。


それは、私を更に深い闇へ追い込む行為なのかもしれない。


それでもお母さんの笑顔を守れるのなら……


答えを求めるように、私は彼の瞳を見つめた。


碧くんは冷徹な視線を崩さないまま、喉の奥を低く鳴らした。


「一度隠したものは、最期まで隠し通せばいい」


窒息しかけていた私に、彼は咎めることもせず、冷たくも確かな逃げ道を差し出してくれている。
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