One year left -家族ごっこ-
車庫の暗がりに自転車を停め、二人で並んで玄関のドアを開けた。


靴を脱ごうとした瞬間、奥の廊下からお母さんが顔を覗かせる。


「あら、今日も一緒に帰ってきたの?」


少しだけ驚いたような、繊細な声。


「うん。またそこで、偶然会ったから」


隣に立つ碧くんが、平然とした声で言い放つのを聴きながら、私は貼り付けようとしていた笑顔を一瞬だけ強張らせ、小さく頷くことしかできなかった。


彼はそのままリビングのドアを開けると、私を置き去りにするような落ち着いた足取りで部屋へと入る。


「父さん、おばさん、ソファに座って?」 


そう促され、ふたりが腰を下ろしていく姿を見つめているうちに、私の心臓を冷たく掴むような嫌な予感がじわりと膨らんでいく。


まさか、今ここでーーそう思った、次の瞬間だった。


「姉さんが、話あるって」 


突然、大きな手が私の制服の腕をがっしりと掴んできた。


抵抗する隙もなく引きずられ、おじさんとお母さんの正面に立たされる。 


心臓が、肋骨の裏を激しく叩いた。


けれど、パニックのすぐ後ろで、冷たい覚悟がすとんと胸に落ちてくる。 


もう、言うしかない。 


碧くんが、私にはどうしても作れなかったタイミングを、容赦なく作り出してくれたのだ。
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