One year left -家族ごっこ-
「ダンスに興味があるんだ?それはすごいなぁ」 


おじさんは腕を軽く組み、嬉しそうに目を細めた。


「萩花ちゃん、自分の好きなことをやりなさい。若いんだからさ」


「でも、月謝とか……」


消え入りそうな声で、私は言葉を濁す。 


バイトを辞めてしまえば、自分の収入はゼロになる。


もう、私の力では一銭も払えない。


「そんなことは大人に任せておけばいいんだよ。心配する必要はない」


おじさんがソファから立ち上がった。


私のすぐ目の前まで来ると、大柄な身体をゆっくりと屈めて私の視線に合わせ、優しく微笑んだ。


「通いたいダンススクールが決まったら、遠慮しないで、すぐおじさんに言うんだよ」


「……ありがとうございます」 


私はもう一度、深く頭を下げた。


おじさんの曇りのない誠実さが、すでに灰になってしまった私の心を、ただ静かにそっと崩していく。


「良かったわね、萩花」


お母さんの柔らかな声に、笑顔が混ざっているのが分かった。


けれど、私は顔を上げることができなかった。


でも、これでいい。


お母さんは傷つかず、悲しんでもいない。 


私の心臓は、ようやく規則正しいリズムを取り戻し始めていた。
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