One year left -家族ごっこ-
お風呂から上がり、廊下へ出た。


リビングのドアの隙間から、薄い明かりが漏れている。


ドアを開けると、碧くんがソファにもたれ、スマホの画面を眺めていた。


「まだ寝ないの?」 


声をかけると、彼がゆっくりと顔を上げる。


その瞳は少しだけ眠そうに細められた。


「もう寝るところ」 


碧くんは小さくあくびを噛み殺す。


私の張り詰めていた肩の力がスッと抜けていくのが分かった。


「……今日は、ありがとう」 


「別に」


彼はただ静かに呟いただけで、再び手元の画面へと視線を落としてしまう。


「碧くんの助言がなければ、私、本当のことを言ってお母さんを傷つけてたと思う」 


私は冷えたフローリングを歩き、冷蔵庫を開けた。


流れ込んでくる冷たい冷気。


奥からミネラルウォーターのボトルを取り出す。 


トクトクと、静まり返った部屋に水音が響く。 


二つのガラスコップに透明な液体を満たし、そのうちの一つを手に取ってソファに座る彼へと近づいた。
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