One year left -家族ごっこ-
これ以上の追及を避けるように、私は別の話題を引っ張り出した。


「そういえば、希歩と凛からライン来なかった?」


「話を逸らすなよ」 


彼は不満げに喉を鳴らす。


「でも、碧くんから返事がないって二人とも落ち込んでたよ」 


今朝の靴箱での惨状を伝えると、碧くんは露骨に眉間にシワを寄せた。


「誰だっけ」


「ほら、サイゼリヤでライン交換したでしょ?」


「あぁ、そうだったな」


「ちゃんと、返事返してあげてね?」


「面倒だから嫌だ」 


一蹴された。


その冷徹な横顔に、昨夜のスクール前での残酷な本音が重なる。


「私の友達に、そういうこと言わないで」


「普段は知らない奴と交換なんかしないから」 


碧くんの低い声が静寂に溶ける。 


確かに、彼に群がる女子たち一人一人と連絡先を交わしていたら、大変なことになる。


「じゃあ、私の友達だから、交換してくれたの?」 


「違う」 


即答だった。


「じゃあ、どうして?」 


碧くんは手の中の空になったグラスを、ゆっくりと私の方へ向けた。


照明の光を弾くガラスの向こう、琥珀色の瞳が私をまっすぐに捉える。


「……あんたと、交換したかったから」 
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