One year left -家族ごっこ-
寂しいなんて、私が思う資格はない。


私が寂しさを理由に泣くなんて許されない。


ベッドに横になり、天井の深い闇を見つめる。


さっき碧くんから突きつけられた言葉が、何度も、何度も頭のなかで鋭く繰り返されていた。


もしも私にグレーといわれる部分があるとするのなら、それは間違いなく、お父さんのことだった。 


小学二年生の秋。 


野良猫を追いかけて車道に飛び出した私をかばい、お父さんは車に轢かれて死んだ。


私の代わりに、死んだ。 


急に息が苦しくなり、布団を頭からかぶる。


閉ざされた暗闇の奥、あの日の凄惨な記憶が、あまりにも鮮烈にフラッシュバックした。


『あんたのせいで、お父さんは死んだのよ』 


お母さんが、血の涙を流すような凄まじい目で私を激しく睨みつけていた。


『……あんたが、死ねば良かったのに』


あの枯れ果てた声が、今も私の鼓膜を容赦なく抉(えぐ)り続けている。 


お父さん、ごめんなさい。


お母さん、ごめんなさい。 


いくら心の中で謝っても、あの秋は二度と返ってはこない。


許されるはずなどなかった。


まぶたの隙間から、涙がとめどなく溢れ出し、冷えた耳元を濡らしていく。 


だから私は、お母さんの幸せを見届けて、お母さんの世界から消えなければいけないのだ。
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